私の不幸
今日は、学園入学前の最後のデート日。
一時は学園生活で必要な物を揃えるため、頻繁にデートに来てくれていたザガロだったけれど。
ある程度必要な物を揃え終わったと思ったら、またもすっぽかすようになってしまった。
一緒に住んでいる関係上、ジェニーさんとは毎日顔を合わせているはずなのに、私とは週に一回のデートでさえ顔を出すことはできないの?
そこまでジェニーさんと一緒にいたがる理由……一緒にいなければいけない理由は何?
一瞬でも目を離したら、彼女は消えてしまうとでも言うの?
ずっとずっと聞きたくて、でも一度も聞けていないその疑問。
聞いたらザガロを怒らせそうで、これまで以上に彼が私から離れていってしまいそうで、聞きたくても聞けないでいる。
父には何度も彼のことを相談したけれど、メラニン候爵に先手を打たれてしまったのか、「ジェニーさんは身体が弱いと聞いている。そのため婚約者もまだいない。つまりザガロ君と結婚したら、高確率で彼女とも生活を共にしなければならないということだ。そうなった時のためにも広い心で接しておかなければ、侯爵家での結婚生活など上手くいかないぞ」と繰り返されるばかりだった。
「広い心で接しろと言われても、こうも待ち合わせをすっぽかされるんじゃ……どんなに我慢したところで、結婚生活なんて上手くいく気がしないよ……」
メラニン侯爵家との繋がりにより、我が家は以前より販路をかなり拡大し、売り上げは鰻登りに倍増している。
だからこそお金大好きな父は私とザガロを別れさせたくないし、なんとしても結婚させて、縁が切れないようにしたいのだろう。
我が家からの援助──領地経営の人員も派遣した──のおかげで、侯爵家の領地収入も順調に増えてきているらしいし、私一人が我慢すれば、全てが丸く収まるのだ。
けれど──周囲がみんな幸せなのに、私一人だけが不幸というのは、納得できないものがある。
「私の不幸の上に、みんなの幸せが乗っかってる……。だったら私の幸せは? 私は幸せになっちゃいけないの?」
ザガロと婚約者になってからの三年間、ジェニーさんが現れるまでは、確かに私達はうまくいっていた。
たとえそれが、恋や愛というものではなかったとしても。少なくとも、私はザガロのことが大好きだったから──。
またも胸が痛みを訴え、私は歯を食いしばる。
どうしたら彼と、元のような関係に戻れるのか。どうしたら彼に、私の気持ちが伝わるのか。
いくら考えても分からなかった──。




