8 パーティーメンバーの迷宮探索
「さあ、ゆっくり探索するぞ!」
パーティーメンバーは、やっと解放されて、安心したのだ。
箍がはずれても、仕方がないだろう。
魔方陣に入った瞬間から、魔獣を呼び込み倒しまくっている。
フラン達魔術師組は、結界を張ってそこで寛ぎながら、狩人達の様子を眺めていた。
「いつまで彼等は此処にいると思います?」
「さあね、気が済むまでですかね。」サルキチは、興味なさそうに答えた。
そう言えばサルキチに渡そうと思っていた資料があった。フランはサルキチに、土の大陸のことを話して聞かせ、そこで手に入れた書類を渡した。
「これは、貴重な資料だ。僕の研究がはかどります。フランさん、ありがとう。」
フランは気になっていた、迷宮に施した対策が、どんな物だったのかをバットマンに聞く。
「ああ、これまでしたことと同じ作業です。結界と認識阻害です。ただ施す場所を変えただけですよ。魔方陣の周りでは無く、出口の5つの扉に施しました。」
そうか、何故今まで気付かなかったのか。出口を一つにしてしまえば、問題は無かったのか。
自分の地域の出口だけを残して、後は通れない様にすれば、何処の国でも迷宮を利用出来るのだ。
これからは総ての迷宮に同じような措置が取られていくだろう。
「特殊な、認識阻害魔術なので見破るのは難しい。更に結界があります。安全に迷宮に潜れるようになります。」
「では、これからは他の大陸へは転移出来ませんか?」
「いや、ある一定の魔術師には、術の見破り方を教えます。国に認められた、少数だけですが。」
フランは、大丈夫だろうか?自分もその術を知りたい。王様になんとか選んで貰おう。
漸く狩りを終えたメンバーが、休もうと言って結界の中に入ってきた。
ここは、まだ初めの通路だから寒いはずなのに、彼等は汗だくで、来ていたスーツを脱いだ。
彼等から盛大に湯気が立ち上っている。
フランはこの分なら、ここで暫く滞在することになりそうだと、周りを見まわし、何か生活スペースが作れないかと考えた。
すると、壁の一部がみるみる大きく後退して、空洞が出来上がった。
「なんだ!誰か何かを御願いしたか?」
クマオが、焦って叫んだ。そろそろと手を上げた、フラン。
「僕です。生活スペースが欲しいと考えて仕舞いました。」
「凄いです!また新たな検証が出来ます。迷宮内部を変化させられれば、もっと複雑になって、もっと面白くなりそうです。」サルキチが興奮している。
「これはどれくらい維持出来るんだ?」
「さあ?試しにあちこちに作ってみて、もう一度迷宮に入り直すしか無いでしょうね。」
パーティーメンバー全員、俄然やる気に満ち、ああだこうだと話しながらその日は空洞にゆっくり眠った。
この迷宮は、作り替えることが出来る迷宮だ。
いつの間にか、不思議な成長をして居たのか。これまでだって、フランのように考えた者が居たはずだ。
それなのに今この時になって、迷宮が答えてくれたのには何かの要因があったのだ。サルキチは、
「龍神様は、世界の皆に迷宮を楽しんで貰いたいと考えて居るのでは無いですか?それが実現して、お喜びになったのでしょう。」
と、獣人らしく、信仰心を見せた。
フランも、神は居ることは納得したが、余りにも人間に関心を向ける龍神を少し怖いと感じる。
自分たちの様子を何時も見て居て、逐一希望に応えてくれるというのは、素晴らしいとは感じるが、余りにも身近すぎて怖いのだ。もし自分が、神の意向から外れたら、罰を受けるのだろうか?
考えても仕方がないことだ。相手は巨大な力を持つ神だ。なるべく天罰が下らないように願おう。
それからは、一ヶ月も迷宮に潜って検証した。通信しておいたので心配はしていないだろう。
やっと帰る事が出来そうだ。
パーティーメンバー全員で
五つの扉の場所へ着くとそこには出口が一つしか無いように見える。
バットマンが、何やら呪文を唱えると、隠れていた扉が一つだけ姿を現した。
フラン達が帰る扉。複雑な認識阻害が掛かって居るというのは本当の事だった。チョットのことでは秘密が暴かれることは無いだろう。
現れた扉にはご丁寧に結界が張っており、そこを抜けるときにも魔法が必要だ。
「この術は直ぐに解けます、急いで抜け出して下さい。」
皆、慌てて走りドアに飛び込んだのだった。