4 龍神の謝罪
フランは、ネコマタの話をじっくり聞いていた。
ここは元々猫獣人の先祖が作った、転移陣を敷いた場所だった。
それがマナの大量噴出によって、獣人族の島と繋がらなくなり、忘れ去られてしまっていた。
余りにも昔に作った物だから、もう壊れてしまったと考えていたが、龍神がこのたび声を掛けられた。
「我が作った仕組みで、世界に迷惑を掛けている。マナが暴走しないように今まで押さえてきたが、マナを沈める仕組みを作った。これは我からの謝罪である。楽しんでくれ。」
と言うまれに見る長文のお声がけがあり、それから忽然と龍神は消えたのだとか。
神が造った物だから、悪い物ではないと言う論理らしい。
「ワチキは考えました!願いが叶うなら、お金を一杯出して貰えば良いでしゅ!」
「それは無理だと思いますよ。何せ試練の迷宮でもあるのですから。」
ネコマタ冷静に答えた。
「では、試しに、ほしい素材の魔獣を願ってみれば、検証出来ないか?」
フランの提案により、闇リスはどうかと言うことになった。
願ってみると、一杯出てきた。闇リスの素材の山が出来上がった。
この分だと、この大陸に居ない魔獣も出てくるかも知れない。凄いことになってきた。
「どんどん検証が出来てきました。これは面白いです。レベルによって魔獣を選べると言う事も出来そうです。新人の稽古場にも成りそうですね。」
確かに、面白い。色々な使い道がありそうだ。
それからは皆で希望を言い合い魔獣を倒しながら先に進んでいった。
同じような風景に飽きてきた頃、前方に扉が見えてきた。
「生還した魔術師が言っていた、魔獣が出る部屋に繋がる扉だな。」
余り変な希望を思わないように注意しながら、扉を開けるとそこには大きなダークスネイクがとぐろを巻いていた。これは馴れた魔獣だ。フランとエステバルで難なく倒した。
すると反対の扉が開き、また同じような通路が現れた。
それからは、もう先が分っている。早く先に進もう。皆に飛行のスーツを着せて飛び、ずんずん先を急いだ。
もう魔獣は一杯倒した。その先が知りたい。
生還した魔術師が言っていた出口までやっと着いた。
そこには五つの扉があった。扉にはそれぞれ文字が描いていたが総て古代文字で描かれている。
フランには総て読むことが出来る。共通言語だけが無かった。
「何故共通言語が無い?」
「獣人国の転移陣は利用出来ないくらい跡形もなくなってしまったから、だそうです。」
「どうする?多分これは僕らの元いた場所に出るための扉だ。ただ違う大陸の言葉もある。どういう風に考えれば良い?」
「これは各大陸に通じる転移門だと考えます。他の大陸へ行ってもいいですが、帰ってこられるかは、未知数です。」
サルキチの言うとおりだ。転移陣があっても帰れなかったら、他には帰る手段が無いのだ。
取り敢えず今回は、元の場所へ帰ることにした。
扉を開けるとそこにあったのはまた長い通路だ。そこを飛行しながら急いで抜けると、急に森の中に抜けた。元の場所の少し離れたところにフラン達は立っていた。
「ありがとうございました。無事検証が出来ました。ではこの後我が国から正式な使者が参ります。その時にサミア国王に詳細をお知らせいたします。」
そう言って獣人達は帰って行った。
フランは、龍神の恩恵か、若しくは試練というのは詰まるところ、溢れすぎた地力、マナを迷宮に活用することだったのだと理解した。副産物として魔獣だったり、若しかしたら迷宮経由で他の大陸へ転移出来るかも知れない。
この謝罪という言葉で、龍神が何らかの形で地力に関係していたのだと分った。
神様はいたと言うことか。でも、随分間抜けな神様で、お人好しな奴なんだな。でも何となく憎めない神様だった。
「なあフラン、俺達これを攻略するのにたった2日しか掛かって居ないぜ。」
「ああそうだね。一ヶ月はかかると思っていた。」
「時間、余っちまったな。」
「え?」
「もし帰ってこれる場所なら、試せるんじゃあ無いか?」
「帰れる場所?」
「土の大陸なら、万が一の事があっても、1年後には帰れるだろ?獣人の定期船が行き来してるはずだから。」
「黙っていったら、大騒ぎになるよ。」
「ワチキが残って皆に伝えましゅ。エステバルはずっと行きたがっていましたでシュね。」