10 迷宮の新たな発見
フランとエステバルは、家族を連れて迷宮に入った。
これから1年間、ここで仕事をしなければならない。また、王様に時間の掛かる仕事を押しつけられたのだ。
フラン達は、これ以上家族と離れて仕事をしているのは耐えられないと考えた。
「ワチキ達も一緒に行けば問題ないでシュ。」
そうだな、危険は無い。子供でも楽しめる空間を作れば良いだけだ。
フラン達の居住スペースは、安全を第一に思い描いて作った。
ここに居っぱなしなのはやはりだめだろうか。子供達には友達が必要では無いだろうか。
レーリオが精霊樹に御願いして見ると、子供達の友達として、ワチキの同類の子供達が送られてきた。
まあ、これでいいかもな。たった1年だし、この経験も何かに生かせるだろう。
フラン達の子供達はもう直ぐ七歳になる。フラン達は彼等には成長を止める術は施さなかった。
魔術師にするつもりは無い。フランの例があったのだ。もし、万が一にも同じようになって仕舞ったら危険だ。子供には自分で選んで、好きな道を生きて欲しい。エステバルは、自分は孤児だったし、才能があると言われて魔術師になったが、別に魔術師に成れなくても良かった。騎士でも、パン屋でも良かったのだ。
フランは自分で魔術師に成りたかったから、不満はないが、子供は違う。
自由に生きて欲しい。魔力が少なくても、魔法は使えるのだ。それで十分ではないだろうか。
フラン達に託された仕事は、王様のためのカカオの農場作りだ。その他にも風の大陸のような環境も造らねばならない。経験した人で無ければ、イメージが思い浮かべる事が難しい仕事だ。
迷宮は何処まで広げても、問題なく思い通りになってくれる。
迷宮の地力が強いからなのだろう。
主要な通路から左側が、フラン達に任された場所だ。
フラン達の他にも迷宮では仕事をしている。通路の反対側、右側では、トーマスマンが迷宮を騎士達のための訓練施設を造っていた。そこは上下に広げられ、何層にも渡った複雑な造りをしている。
まさしく迷路。トラップまで造っている。エステバルは、出来上がるのを楽しみにしている。
急ぐ仕事では無い。楽しみながらゆっくり、思いを乗せて自由に造っていくのだ。
アイデアに詰ると、暫く家族で楽しく迷宮で遊ぶ。これで王様から俸給を貰うのは、申し訳なくなる。
王城は予定通り迷宮のある、予定地に出来上がった。その内王様がここに遷都を宣言するだろう。
街は賑わいを見せてきた。獣人族との交流も以前より頻繁に行われている。
獣人族の魔術師が魔術師ギルドの担当をするようになった。これでサミア国の魔術のレベルは格段に上がるだろう。
やっと仕事が終わり、迷宮から出ることが出来た。
「フラン、俺、なんだか魔力が上がった気がする。」
エステバルがそう言った。成長期が終わったのに魔力が伸びるのは珍しい。
更にトーマスマンまでが、魔力が上がったと喜んでいる。ふと自分の魔力を感じてみると、フランも、魔力が大きくなっていた。
「フラン、若しかして迷宮にいたお陰で、魔力が大きくなったのでは?」
トーマスマンと一緒にまた検証を始めた。
一番顕著だったのは、子供達だった。
「これは、術を施すよりも身体に影響が無くて、安全だ。」
フランは、嬉しくなった。これで、魔術師に対する、偏見もなくなるかも知れないと。
どこかで龍神が微笑んだような気がした。




