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夢の回廊  作者: チャロ吉
11/12

10 迷宮の新たな発見

フランとエステバルは、家族を連れて迷宮に入った。

これから1年間、ここで仕事をしなければならない。また、王様に時間の掛かる仕事を押しつけられたのだ。

フラン達は、これ以上家族と離れて仕事をしているのは耐えられないと考えた。

「ワチキ達も一緒に行けば問題ないでシュ。」

そうだな、危険は無い。子供でも楽しめる空間を作れば良いだけだ。

フラン達の居住スペースは、安全を第一に思い描いて作った。

ここに居っぱなしなのはやはりだめだろうか。子供達には友達が必要では無いだろうか。

レーリオが精霊樹に御願いして見ると、子供達の友達として、ワチキの同類の子供達が送られてきた。

まあ、これでいいかもな。たった1年だし、この経験も何かに生かせるだろう。

フラン達の子供達はもう直ぐ七歳になる。フラン達は彼等には成長を止める術は施さなかった。

魔術師にするつもりは無い。フランの例があったのだ。もし、万が一にも同じようになって仕舞ったら危険だ。子供には自分で選んで、好きな道を生きて欲しい。エステバルは、自分は孤児だったし、才能があると言われて魔術師になったが、別に魔術師に成れなくても良かった。騎士でも、パン屋でも良かったのだ。

フランは自分で魔術師に成りたかったから、不満はないが、子供は違う。

自由に生きて欲しい。魔力が少なくても、魔法は使えるのだ。それで十分ではないだろうか。


フラン達に託された仕事は、王様のためのカカオの農場作りだ。その他にも風の大陸のような環境も造らねばならない。経験した人で無ければ、イメージが思い浮かべる事が難しい仕事だ。

迷宮は何処まで広げても、問題なく思い通りになってくれる。

迷宮の地力が強いからなのだろう。

主要な通路から左側が、フラン達に任された場所だ。

フラン達の他にも迷宮では仕事をしている。通路の反対側、右側では、トーマスマンが迷宮を騎士達のための訓練施設を造っていた。そこは上下に広げられ、何層にも渡った複雑な造りをしている。

まさしく迷路。トラップまで造っている。エステバルは、出来上がるのを楽しみにしている。

急ぐ仕事では無い。楽しみながらゆっくり、思いを乗せて自由に造っていくのだ。

アイデアに詰ると、暫く家族で楽しく迷宮で遊ぶ。これで王様から俸給を貰うのは、申し訳なくなる。

王城は予定通り迷宮のある、予定地に出来上がった。その内王様がここに遷都を宣言するだろう。

街は賑わいを見せてきた。獣人族との交流も以前より頻繁に行われている。

獣人族の魔術師が魔術師ギルドの担当をするようになった。これでサミア国の魔術のレベルは格段に上がるだろう。


やっと仕事が終わり、迷宮から出ることが出来た。

「フラン、俺、なんだか魔力が上がった気がする。」

エステバルがそう言った。成長期が終わったのに魔力が伸びるのは珍しい。

更にトーマスマンまでが、魔力が上がったと喜んでいる。ふと自分の魔力を感じてみると、フランも、魔力が大きくなっていた。

「フラン、若しかして迷宮にいたお陰で、魔力が大きくなったのでは?」

トーマスマンと一緒にまた検証を始めた。

一番顕著だったのは、子供達だった。

「これは、術を施すよりも身体に影響が無くて、安全だ。」

フランは、嬉しくなった。これで、魔術師に対する、偏見もなくなるかも知れないと。

どこかで龍神が微笑んだような気がした。



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