第六章:“楽しく推し続ける”ために、私たちにできること〜ファンとVtuberの相互理解を育むために〜
推すことは、本来とても個人的で自由な営みです。
けれど、配信という「公開された空間」と、ファンダムという「共有された文化」がある以上、
その“自由”は他者との接触によって変質することがあります。
この章では、Vtuber側もファン側も、「気持ちよく推し続けられる関係性」を築くためにできる工夫をまとめます。
⸻
1. 「私はこういうスタンスで応援してます」──推し方の多様性を認める
Vtuberのファンには、さまざまなスタイルがあります。
•全配信を見る人
•通知だけ追う人
•推しがいる箱全体を応援する人
•一人にだけ集中する人
•スパチャを投げる人/ROM専で静かに見守る人
どれも「応援のかたち」です。
お互いに理解し合いたいこと:
•自分と違う推し方=間違いではない
•応援の量=愛の深さではない
•静かに見守る人も、声をあげる人も、どちらも大切な存在
“正しさ”よりも、“共に応援している”という連帯感が、健全なファンダムを育てます。
⸻
2. 「Vは自分の所有物ではない」──推しへの距離感と自律性
Vtuberに親しみを感じれば感じるほど、
つい「自分の推し」「自分の言うことを聞いてくれるはず」と思いがちです。
でも、Vも一人の人間であり、演者であり、時にあなたと違う価値観を持っています。
よくある危うさ:
•推しが別のVとコラボ →「浮気」「裏切り」と捉える
•自分の希望が通らない →「もう応援できない」と断絶
•Vが発言ミス →「こんな人だとは思わなかった」と過度に糾弾
これらは、Vが“自分の思い通りに動く存在”だと思い込むことから起きる悲劇です。
共存するために必要な感覚:
•推しは「自由に選び、成長していく存在」
•応援は「命令」ではなく「後押し」
•時に離れる自由も、再び戻る自由もある
“所有”ではなく、“共に歩む存在”として推しを見守る視点が求められます。
⸻
3. 「嫌なことを言われた時、どうするか」──SNS時代の自己防衛
ファン同士の対立、過激なアンチ、攻撃的な言葉……
現代のファンダム文化では、心を守る術もまた大切なスキルになっています。
対応術:
•ミュート・ブロック・NGワードの活用
•「見ない権利」を行使する勇気
•どうしても辛い時は「推し活を一時停止する」のも選択肢
また、心を削るようなやり取りが起きたときには、
「本当に自分の好きなことに集中する」という軸に立ち戻ってください。
•好きなシーンの切り抜きを観る
•配信アーカイブを見返す
•自分の応援スタイルを再確認する
他者の言動に振り回されるのではなく、「私は何が好きか」を軸にすることで、
推し活が“自分のための時間”に戻ります。
⸻
4. 「ファンダム文化を育てるのは“私たち”」──加担しない勇気
Vtuber文化はまだ新しく、成熟の途中です。
だからこそ、私たち一人ひとりの態度が、文化そのものを形作っていきます。
•誰かを貶すより、「好き」を語る方が空気がよくなる
•晒すより、スルーする勇気の方が長く推せる
•同調圧力に流されず、心の声を大切にする
そして、「おかしいな」と思ったら、
Vや仲間を守る言葉を持つことがファンダムの健全性を支えるのです。
⸻
まとめ:推し活は、「私を幸せにする営み」であること
•推しに疲れたら休んでいい
•応援のしかたは、自由でいい
•誰かと比べなくていい
•推しを“人”として信じていい
•他人をジャッジしなくていい
Vもファンも、完璧じゃない。
でも、お互いを「人として尊重する文化」があれば、
もっと長く、もっと楽しく、“好き”と一緒にいられるはずです。