第五章(補足):Vtuberが「やらない方がいいこと」 〜本人がトラブルに巻き込まれないために〜
Vtuberとして活動していると、意図せず炎上・誤解・分断に巻き込まれることがあります。
その多くは「悪気のない言葉」や「気遣いのつもりの発信」から始まってしまうもの。
この章では、“トラブルの火種になりやすい発言・態度”をあらかじめ知っておく”ことを目的にまとめていきます。
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1. 数字を語るときの注意点(登録者・格差・伸び悩み)
登録者数、再生数、スパチャ額――
Vの活動において「数字」は成績のように見えがちで、つい言及してしまうことがあります。
リスク:
•ファンが「上下」を意識し始める
•自分より数字の小さいVとの関係が“恩着せがましく”見られる
•自分より大きな箱やVに対して“嫉妬や愚痴”と取られる発言になってしまう
例(誤解を招く表現):
•「あの子とコラボしたら急に数字が伸びて~」
•「今月は登録者100人しか増えてなくて正直きつい」
•「うちの箱は他と比べて…」
気をつけるポイント:
•数字に触れるときは“感謝”を添える(例:「来てくれる人が増えてうれしい」)
•他者との比較ではなく“自分の目標軸”で語る
•伸び悩みの話は、自分の挑戦のモチベーションとして限定的に共有する
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2. ファンを分断するような発言の危険性
配信に多く来るファンと、ROM専(見てるだけ)のファン。
古参と新参、Twitterにいるファンといないファン。
──V自身が何気なく“差”を語ってしまうと、それが「好きの格差」として広がってしまいます。
リスク:
•ファンが「自分は愛されていない」と感じる
•ファン同士で「優遇されている・されていない」の言い合いになる
•特定ファンとの“距離感”を疑われる
例(危うい発言):
•「〇〇さんって本当に昔から支えてくれてて特別なの」
•「最近コメントしてくれる人ばっか覚えちゃって…」
•「〇〇界隈の人って正直ちょっと…」
気をつけるポイント:
•ファンの“スタイル”を否定せずに「見てくれてありがとう」を共通軸にする
•特定のファンを“持ち上げすぎない”
•コアファンだけでなく、広く“応援してくれるすべて”を意識する
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3. 仲良しアピールが逆効果になる場合
「この人とはプライベートでも仲良しです!」
「この人のこと、本当に信頼してて……」
──そういった発言が“ほほえましい”で終わることもあれば、ファンの不安を煽る燃料にもなることがあります。
リスク:
•「距離が近すぎる」と思われる
•自分の推しが“その関係性の中にいない”と感じて孤独になるファンが出る
•相手のファンと自分のファンが対立しやすくなる
特に、相手が人気Vだった場合には、
「数字目当ての癒着だ」といった誹謗中傷に発展することも。
気をつけるポイント:
•仲良しアピールは“適度な距離感”で
•裏の関係はあえて語らず、表での信頼や楽しさにフォーカスする
•「ファンの前では、皆が同じ距離感」を意識した発言を
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SNSの“言葉が届きすぎる”現代的リスク
かつてファンの声は、推し本人に届くまでに時間も距離もありました。
しかし今のSNS時代では、言葉は一瞬で“届いてしまう”――それも、予期せぬ形で、予期せぬ温度で。
仲の良いV同士がいるとき、
ファンはそれを喜ぶだけではなく、数字や待遇を比較し、片方のファンがもう一方を敵視するということがあります。
「便乗してる」「○○の人気を利用してる」「本当は好かれてないくせに」――
そんな言葉が、リプライやスクショ、晒しによって当人たちの目に入ってしまう。
そして最も悲しいのは、
本人たちは何も変わっていなくても、“ファン同士の争い”のせいで、関係にヒビが入るという現実です。
「もう絡むのはやめておこうか」
「相手に迷惑かもしれない」
「また言われるくらいなら、避けよう……」
そうやって、仲の良かった2人が距離を置き始める。
まさに、「ファンが勝手に戦って、勝手に壊す」構造が出来上がってしまうのです。
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この構造は、誰かの悪意で起こるわけではないこともあります。
多くは、「推しを守りたい」という感情が暴走してしまった結果。
でもその想いが、結果的に推しを孤立させ、つながりを壊してしまうのなら、それは本末転倒です。
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だからこそ、V自身も、ファンも、理解しておく必要があります。
•言葉は想像以上に届いてしまうこと
•届くことが善であるとは限らないこと
•そして、関係を壊す“声”より、守ろうとする“沈黙”や“気遣い”のほうが、何倍も強いこと
推しのために何かを言いたくなったとき、
それが誰かを傷つけるかもしれないなら、ひと呼吸おいて考える。
その思慮深さこそが、真の「味方」である証なのです。
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4. 対立に加担しない、放置しすぎない
ファン同士の争いや、自分に対する批判。
そこに「完全無視」で通すと、“認めた”と捉えられることもある。
一方で、「怒る」「言い返す」と、それが燃料になってしまうこともあります。
理想的な対処:
•明確な境界線を示す(例:「他のVやファンへの攻撃はやめてください」)
•冷静に短く伝える(例:「争いは悲しいので、見たくありません」)
•自分の態度・信念を再確認してもらう(例:「誰もが安心できる空間を大事にしたいです」)
トラブルに加担せず、沈黙せず、あくまで姿勢で示すのが最も効果的です。
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5. “味方を選ぶ”発言の持つ分断力
•「〇〇だけは信じてる」
•「やっぱり昔から応援してくれてる人が一番だね」
•「これからも“本当の”味方とだけやっていきたい」
──こうした言葉は、V自身が不安やストレスの中で口にしがちですが、
「じゃあ私は?」という排除された気持ちをファンに植えつけてしまいます。
人は「選ばれたい」生き物。
推しから見捨てられる・味方ではないとされることへの不安は、強い拒絶や攻撃へと反転することもあります。
伝え方の工夫:
•「いつも支えてくれてありがとう」ではなく「どんな形でも見てくれてる皆さんありがとう」
•“選ぶ”のではなく“共にいる”という言葉で温度を伝える
•「信じてくれる人がいるだけで十分」と、余白を残す表現を心がける
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まとめ:Vが気をつけたいのは、“火を生まない言葉の選び方”
誰かを傷つけようと思って言っているわけじゃない。
でも、言葉には背景と聞き手の“受け取り方”がある。
炎上や誤解に繋がる言葉には、共通して「無意識の分断力」が潜んでいます。
•上下をつける言い方
•誰かを除け者にする言い回し
•見ていない人を切り捨てる態度
それらを避け、誰にとっても安心できる場所をつくることが、推し続けてもらえる鍵なのです。