第五章:Vが心を守るために「やらない方がいい」こと 〜“誠実さ”と“消耗”は紙一重〜
Vtuberとして活動していく中で、
「もっと応えたい」「頑張らなきゃ」「迷惑をかけたくない」
──そんな気持ちが募れば募るほど、心は静かに削れていきます。
この章では、Vが精神的に消耗しないために、“やらない方がいい”行動・思考”についてまとめます。
どれもファンを思えばこその行動ですが、長く続けるためには「守るべき境界線」でもあるのです。
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① 無理なスケジュールや「常に反応する」習慣
やってしまいがち:
•毎日配信しないと不安になる
•リプライ・マシュマロ・ファンアートに常に反応しようとする
•休むと申し訳なくて言い出せない
活動者である前に、あなたは一人の人間です。
体調・気分・生活が整っていなければ、どれほど応援されていても“楽しめない自分”が生まれてしまいます。
心を守るためのヒント:
•活動の“曜日・頻度”をある程度明示し、期待値を自分で設計する
•反応や返信は「時間を決める」「気が向いたときだけ」とルール化する
•休むことを「申し訳ない」ではなく「充電の時間」と位置づける
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② 感情のままに「愚痴」や「弱音」を出す
ファンはVの一番の味方であり、“受け止め手”になってくれる存在です。
だからこそ、配信やSNSで弱さを見せたくなる時もあります。
しかし、「愚痴」や「他者へのあてこすり」「過剰な自己否定」は、
ファンの気持ちを不安定にする“刃”にもなりえます。
例:
•「最近、見てくれる人が減った気がする……」
•「〇〇って、どうしてあんなこと言うのかな……」
•「もう配信、意味あるのかなって思っちゃって……」
これらは本心であっても、聞いたファンが“自分のせいでは”と罪悪感を抱いてしまうことが多いのです。
心を守るためのヒント:
•“吐き出す場所”と“見せる場所”を分ける(仲間・運営・など)
•「悩み」よりも「こうしていきたい」という意志を軸に話す
•感情的になったときほど、SNSは“一晩置いてから”投稿を考える
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③ 数字に一喜一憂して自分をすり減らす
数字は現実ですが、真実ではありません。
•伸びないと「自分が悪い」と思ってしまう
•他のVと比較して焦ってしまう
•少し減っただけで「もうダメだ」と極端に落ち込んでしまう
こうした状態が続くと、“表面だけのウケ”を狙った配信や言動”に傾き、本来の自分を見失ってしまうことになります。
心を守るためのヒント:
•短期の数字より「半年後にどんなファンが残っているか」を考える
•比較するなら「他人」ではなく「自分の過去」に
•数字が伸びないときは「コンセプトや届け方を調整する」時間と捉える
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④ ファンの声を“全て”受け止めようとする
•厳しいコメントを「反省しなきゃ」と全部受け止める
•「あの人はこう言ってた」→自分が悪いのかも?
•何を言っても「誰かは怒る」から発信が怖くなる
ファンの声は宝物であると同時に、取捨選択が必要な“情報”でもあります。
心を守るためのヒント:
•ネガティブな意見の“言い方”に問題がある場合は受け取らなくていい
•自分のコンセプトや軸に合わない要望は「ありがとう」で終えていい
•「全員に好かれること」を目指さない
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⑤「Vとしての自分=すべて」になる
これは、Vtuberにとって最も危険な落とし穴です。
•オフの時間にもVのことを考えてしまう
•アバターと自分を切り離せなくなる
•「Vとしての自分」が崩れると、すべてが壊れたように感じる
V活動は、“人格の一部を使った演技”でありながら、時に“自分自身”に深く重なります。
だからこそ、Vの自分と、本来の自分の境界線を意識的に保つことがとても大切です。
心を守るためのヒント:
•配信とは別に、「誰でもない自分」に戻れる時間を確保する
•日常生活で人と関わることも「地に足をつける手段」と考える
•自分を保つために、あえて“演じる距離感”を作ることも選択肢
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“生き延びる”ことを、最優先に
あなたの声は、表情は、活動は、ファンにとっての灯です。
けれど、その灯を消さないためには――
「完全に応えない勇気」「すべてを背負わない選択」も、必要なのです。
「続けてくれて、ありがとう」
「今日も笑顔を見せてくれて、ありがとう」
ファンは、あなたが“無理なくそこにいてくれること”を一番望んでいます。