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7...気づいた恋心






 《アル・・》


 《---きて・・アル・・》




 「--んん・・・アリ・・エル?」


 遠くからアリエルに呼ばれたような気がする。ずっと戦い続けていたからとうとう現実逃避で夢でも見ているのだろうか?


 「ロゼアル様!・・・良かった・・」


 重い瞼をゆっくり開くと、ぼやけた視界に大粒の涙をぽろぽろと溢れさせながら、自分の呼び掛けるアリエルの姿があった。今までの彼女とは違い、感情を露わにし、目元は赤く腫れているようにも見えるが、私を気遣ってくれているのがわかる。


 (・・そうか。私は都合の良い夢を見ているんだな。)


 討伐中の自分の前にアリエルが現れることはあり得ない。こんなに感情を露わにしてくれている姿だって初めて見る。


 「私の為に・・泣いているのか?」


 問いかけにアリエルは答えないが、こちらを見つめながら頬を紅潮させている姿が、肯定しているように思えて愛おしくて仕方ない。


 「こちらにおいで・・」


 私の誘いにアリエルは目を大きく見開いて驚いているようだが、おずおずと戸惑いながらベッドの枕元まで近づくアリエルが可愛らしい。


 (これは絶対に夢だ!夢に違いない!こんなに素直にアリエルが私のいう事を聞いてくれるなんて・・都合がよすぎるっ!)


 夢だと思っていても、会いたくても会えなかったアリエルに会えた喜びが、自分の心の中に抑えていた感情を暴発させていたことに、アル自身気づけなくなっていた。


 「手を・・」


 アルの言葉に素直に手を差し出す彼女の手をぎゅっと掴むと、自信の胸元に引き寄せた。


 「--きゃぁっ?!ロゼアル様?!」


 慌てるアリエルをぎゅっとそのまま抱きしめると、エルと同じ甘い花の香が鼻孔をくすぐり、更にアルのキモチは高揚していく。


 「ずっと会いたかったんだ・・顔を見せて?」


 甘い声音で囁くように伝えると、少し震えながらアリエルはゆっくりとこちらを見上げてくる。その瞳は涙で潤み、透き通った碧色はまるで澄み渡った美しい海のような色に映る。泣きすぎたのか鼻っ柱までほんのり赤くなっているのが堪らない。

 

 「あぁ・・ずっと会いたかった・・大好きだよ・・アリエル。」


 アルの言葉にアリエルの顔は、真っ赤に染まり目もこれでもかという程大きく見開き、プルプルと唇が震えている。その潤んだ唇が美味しそうで、たまらずアリエルの後頭部を自身の手で引き寄せ、唇を食むようアリエルの唇を自身の唇で覆った。


 柔らかい感触に数秒で離した唇が惜しくて、何度も角度を変えて唇を合わせていく。女性の唇とはこんなにも甘く柔らかく、愛おしものなのだろうか。


 「・・ん・・ロゼ・・アル様・・もう‥だめです。」


 一心不乱にとはまさにこのことなのだろう。夢中になって唇を味わうアルに、なぜかアリエルは自分に触れるのを躊躇うように感じる。


(照れているのか?かわいい・・私のアリエルはかわいすぎる)


気遣うように触れないよう躊躇うアリエルの態度が照れているように感じ、余計愛おしく思える。更に彼女の唇を舐めようとした瞬間、ぐいっとアリエルの体が自分から離れた。


 「え?」


 驚き呆然とするアルの前にはなぜかルシードが立っている。


 「???おい。私の夢から出て行ってくれ。」


 折角良いところだったのに!と憤慨したい気持ちを抑えながらも、ルシードに出て行けと促す、しかし、ルシードは呆れたような表情でアルを見下ろすといつもの口調で言葉を投げてくる。


 「おいおいおいおい・・頭イカレちまったのか?ロゼアルいい加減目ぇ覚ませ!」


 「???」


 ルシードの太々しい態度を睨みつけながらアルは逡巡する。何が起こっているのかわからない。私とアリエルの夢に何故ルシードが??


 「お前何故ここにいるんだ?」

 「ロゼアルがぶっ倒れたから連れてきて、様子見に来た。」

 「私が??」

 何を馬鹿なことをと睨みつけるがルシードは動じない。


 「魔獣の攻撃をエルの代わりにくらっただろうが。」

 「・・・・・」

 ーー徐々に記憶が蘇る。


  確かに上級魔獣を倒したと思った。エルが攻撃をかわせないと咄嗟に察して自然に体が動いた。そしてその直後・・確かに引き裂かれるような鋭い激痛が・・・


 「・・・・・」


 「--おーい?大丈夫かー?思い出しちゃった?」


 徐々に青ざめて覚醒していくアルの前で、ルシードはにやりと弧を描くように笑うと、揶揄うようにこちらの様子を伺ってくる。


 「・・・私は・・どれだけ寝ていたんだ?」


 少しづつ状況が把握できてくると、先ほどまで全く気にならなかった背中に痛みが急に戻ってきた・・


 「2週間。」

 「な・・・2週間・・・だと?!」

 青ざめるアルにルシードは溜息を吐いているが、隣に佇むアリエルは何も言わず苦笑を浮かべている。


 「・・それじゃ・・討伐は・・どうなったんだ・・」


 頭がパニックを起こし、必死に頭を働かせようと状況を確認する。


 「ロゼアルがぶっ倒れたから、治癒魔法師全員に全力で治癒してもらってー・・魔獣は攻撃した後力尽きて絶命したから、魔獣除けの薬撒いて撤収しることになったんだけど、エルのやつ早く本部で安静にさせたい!って言い張ってさ。エルの奴魔力切れ起こしてたのに、薬で魔力回復させて風魔法で本部に連れ戻ったんだよ!アルを抱き上げたエルがかわいい王子様みたいだったぜ?流石に転移魔法は重症のロゼアルには危険だったしな。だから治療自体は3日で済んだんだけど、お前目覚めないからさー。1週間位前に邸にお前を運んで、スファルティス夫人がずっと甲斐甲斐しくお前の看病してくれてたってわけ!」


 「で・・・では・・・先ほどまでの・・あれ・・・は・・その・・」

 「現実だよな。俺の目の前でイチャイチャしてたなぁ~」

 バッサリとルシードは即答する。


 アルが真っ青な表情でアリエルを恐る恐る見つめると、彼女は顔を紅潮させ苦笑しながら視線を逸らした。


 (・・・やってしまった・・・)


 夢だと勘違いして盛大に暴走し、とんでもないことをしでかしてしまったらしい。死にたい想いに耐えつつも、先ほどの抱擁も口づけも現実だったのかと思うと、急に幸せを感じている自分自身に更に驚愕した。普段無機質な表情で感情が読めない男が、青くなったり赤くなったりと感情の変化が暴走していた。


 「アリエル・・・すまない・・・ね…寝ぼけてしまっていたようだ・・本当に・・・申し訳ない・・」

 喜んでいる自分を悟られないように、全力で反省している素振りで謝罪の言葉を繰り返した。


 「ロゼアル様は、生死の境目にいらっしゃったんです。目覚められて私も本当に安心しました。」


 謝罪の言葉は軽く流されたような気はするが、本心で自分を心配してくれていたのだとわかり、アルの胸はじいんと温かくなののを感じた。そして、余計に顔がにやけそうになっているのがバレないように、必死で耐えた。


 しかし、アリエルへの想いは有耶無耶にしてはいけない。本能的にアルは察した。


 「アリエル。さっきはいきなりで驚いたかと思うが・・夢であっても、言った言葉は全て・・本音だ。」


 真剣な表情で、アルはアリエルを見つめ言葉を捧げる。アリエルは顔を更に真っ赤に紅潮させると、無言で俯いた。


 「あのさー・・そうゆうことは俺が帰ってからしてくんない?会話が甘すぎて吐きそうなんだけど?」


 あきれ顔のルシードはじとっとアルの顔を見ると大げさに身振り手振りで茶々をいれた。


 「まだいたのか・・早く帰ってくれ。」

 「・・・」


 いつもの調子が戻ってきたアルはいつもの無機質な表情に戻すと、ルシードにとっとと出ていくように促す。アルが討伐中、現実逃避したいほどの状況だったことを理解していたルシードは、溜息を大きく吐いた。


 「ったくしょーがないなー・・貸しにしとくよ。スファルティス夫人。またお会いしましょう!」

 「妻に会う必要はない!」


 さっきまで夢うつつだったアルが、現実に戻ったとたん普段通りのアルに戻り、ルシードはなんだかんだ言っていても喜んでいるのはアルにもわかっている。元気になったアルの姿に、アリエルも素直に喜べたのだった。



 ルシードがひらひらと手を振ってから邸を出ていくと、寝室に二人きりとなった。


 「---あの。さっきは驚きましたが、目覚められて・・・本当に・・・本当に安心しました。」

 アリエルは優しい声音で寝台に横たわったままのアルに微笑みながら告げた。


 「あんなに泣いて・・・そんなに私を心配してくれたのか?」

 「勿論です。・・・私は・・・・妻ですから・・」


 アルの問いに頬を紅潮しながらも、自分を妻と言うアリエルにアルの胸はぎゅっと鷲掴みされたように苦しくなった。その苦しみは甘く昂ぶり何とも言えない感情で、苦しいのに幸せを感じる自身に戸惑いう。遠征前までアリエルとそっけない話し方をしていた自分が信じられない。今はもうアリエルと話していると感情が暴発しないか気が気ではない。


 ダークブロンドの長い髪の毛の落ち着いた色合いも、陽の光でキラキラと輝きサラサラとしていて艶があり思わず触れたくなる。エルとそっくりな鼻も、唇も、瞳も、頬も誰にも触れさせたくない。エルの顔を見ていても好きだと思っていたが、同じ顔なのに不整脈かのように鼓動の速さがおかしいし、見つめていると抱きしめたくてたまらなくなる。


 「アリエル・・すまないんだが・・背中の痛みであまり大きい声が出せないんだ。もう少しこちらに近寄ってもらえないか?」

 「は・・っはい・・ 」

 緊張した面持ちでそっと枕元までアリエルは近づいた。


 「ありがとう。突然告白してすまない。私は結婚する前に、君を愛さないと誓った。そして白い結婚を求めた。君には自由を上げると約束したのに、今では君が普段何をしているのか気になって仕方がない。。恋愛したくない君を好きにさせてあげたかったのに、私は君に愛を乞いたくてたまらない。」


 瞳を逸らさずに真剣に告げる告白は、エルとして討伐中に聞いた言葉ではあったが、あの時よりもさらに熱を持っているようにアリエルは感じていた。


 「身勝手だとはわかっているんだが、私に本当の夫婦になるチャンスをもらえないだろうか。アリエルを諦めたくないんだ。離婚なんてしたくない。」


 「ロゼアル様・・・」

 アリエルは嬉しさと戸惑いで心の中はパニックを起こしていた。


 「アル」


 「え?」

 いきなり何を言ったのか理解できず、アリエルは間の抜けた返事をしてしまった。

 

 「アルと呼んで」

 「あ・・・アル・・」


 アルの乞うてくる瞳が色気を帯びていて、呼び慣れた名前なはずなのに言葉にするのが急に気恥ずかしくなった。

 しかし、アリエルの言葉でぱあっと花が咲き誇るように微笑みアルが自分を望んでくれているのだと実感できた。



 討伐が終わって、アルから愛情を示された時にはちゃんと答えをだそう。そう決めていたはずだった。


 しかし、アルはエルを庇い死んでもおかしくないような裂傷を負い生死を彷徨った。無我夢中でアルを抱き上げて、風魔法を使い続け意地で本部に連れ戻った。その最中もいつ死んでしまうんじゃないかと気が気じゃなくて、アルが目を覚まさない間、自分の感情なんて全て後回しにしていた。


 アルの告白が嬉しいのに言葉が出てこなかった。何を答えるのが正解かわからなかった。


 「拒否されてないってことは、猶予をくれるって受け止めて良いのかな?」


 アリエルの戸惑いを察したのか、アルは優しく問いかけてくれた。アリエルはただただ黙って頷くことしかできなかった。


 それでもアリエルにはもうわかってしまっていた。自分はアルに好意を抱いているのだと。彼が死んでしまったら自分は生きていられないと思うくらい好きだという事を、本能で感じ取っていた。


 ただ、エルとしてどうしたいのか。アリエルとしてどうしたいのか。どう話を切り出したらよいのかアリエルにはまだ答えが出せていなかった。




挿絵(By みてみん)

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