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俺の嫁

「俺の未来の嫁が顔を見せん」

「誰が俺の嫁だ」

「ほれ、ちっこくて可愛い黒いメスだ」

「ほざけ。あのちんまい黒いメスは俺の嫁だ」

「ほざいてるのはお前だ、ボケが。アレは俺の嫁だっつーの。何せ俺と嫁は既に、せせせせ接吻までした仲だからなっ!」

「あんなん接吻に入るか阿呆。お前の無駄に長い鼻っ面に口がぶつかっただけじゃないか。事故事故。あんなん事故だ。俺は認めんな」

「鼻が長いのはお前も同じだろうが。あぁっ! お前は鼻の下が無駄に長いんだったな! 大体、お前に認めて貰う筋合いなんてこれっぽちもねぇんだよ!」

「んだとぉ?! 鼻の下が長くて困ってるのはお前だろうが! まずは自分の面を拝んでから言いやがれ!」




 先よりギャーギャーギョーギョーといがみ合っている様子の赤と青の騎竜を眺め、溜息を零す厩舎勤めの魔族達。

 何をいがみ合っているのか分からないが、思い出したように騒ぎ出しては激しく羽ばたき地団駄を踏み鳴らすから落ち着いて仕事が出来ない有様である。

 しかも、つい今しがた我等が敬愛する魔王殿がかどわかされたと知らせを受けた。


『こいつ等喰ってやろうか』


 黒い思いが今一つになった瞬間である。




「俺の嫁顔見せんなぁ」

 そんな魔族の黒い思い等露知らず、呑気に未来の嫁を思って切ない溜息を零す騎竜達であった。

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