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教えて! 偉い人!

 魔界を始め、世の理に疎くていらっしゃる魔王様への講義を務める事となりました、ステアーナ侯爵家当主のリフェラードでございます。


 では、本日のお題はこちら『種の違いについて』ですね。

 ご存知の通り、大きく分けて四種族がこの地におります。

 我等魔族を始めとし、竜族、妖精族、人族の四種類でございます。

 我等魔族と妖精族は性質が似ておりますので後で説明すると致しまして、先ずは竜族と人族についてお話を進めていきたいと思います。

 大まかに分けまして、竜族と人族は『朽ちる肉を持ち、受け継ぐ血を持つ種族』であり、魔族と妖精族は『受け継ぐ魔力を持つ種族』となります。


 では、人族から説明しましょう。

 この地で一番数が多いのは人族でありますが、他種族からは劣等種と見做されております。

 人族は柔な肉と受け継ぐ血を持ち魔力を持たない種で、柔な肉とは肉体の事であり、意とも容易く切り落とす事が可能であります。

 また受け継ぐ血とは、言葉通りの意味で継ぐ血を持つ為に近親婚は禁忌とされております。

 近親婚の何が禁忌であるのか私共には分かり兼ねますが……はぁ、劣勢遺伝ですか?

 さっぱり分かりません。

 あぁ、端的に言えば先天性の病気や障害が起きやすくなるのですか。

 なるほど、理解できました。

 人族は現在九国に分かれており、内八国は世襲制度で王を継いでおりますので、継ぐ王が病弱揃いでは困るでしょうから、近親婚を回避しているというのも納得ができますね。

 続いて魔力についてですが、人族の多くは魔力を持っておりません。

 稀に魔力を持つ者もおりまして、そういう者は魔術師という職に就く事が多いようですね。

 中には五月蝿い神殿に組し愚かにも我等に挑もうとしているようではありますが。

 と、お話が逸れてしまいました申し訳ありません。

 人族の魔術師は幾つか種類がございます。

 以前、魔界へとやってきた人達の中にも魔術師、精霊魔術師、妖精術師と呼ばれる者達が居た事を覚えてらっしゃいますでしょうか。

 その通りでございます。

 身の程を弁えていないラズアル一行の事であります。

 お許しさえ頂けるのであれば直ぐにでも殺……いえいえ、独り言でございます。

 ラズアルを悪く言うなと。

 魔王様のご命令とあれば、善処いたしたいと思います。

 さて、彼等は全て魔力を持っている訳ではありますが、人族の持てる魔力は我等魔族から見れば微々たるものでございます。

 過去、人界随一で魔力を有すると謳われた者もおりましたが、魔族では辛うじて下位の連中と並べるかどうかという程度でございました。

 人族で魔力を有する者達の多くは、魔物の持つ魔力と同等かそれ以下であります。

 魔力につきましては我等魔族は他の種に引けを取らないと自負しており、続く妖精族、竜族と比べても人族の持つ魔力は哀れを誘いますね。

 また、魔族や妖精族のように不朽の肉体を持つ訳でもなく、竜族のように鋼の肉体を持っておりません。

 力を誇示するこの地に於いて人族は余りに弱い為、他種族からは劣等種と呼ばれている訳でございます。


 さて、続きますは竜族でございます。

 竜族の特徴と言えば、その鋼の如き肉体でございます。

 切り落とそうとした剣が折れると言われる程その体は硬いと言われておりますが、私は見た事はございません。

 初代魔王様が御立ちになる前に、一部の魔族と竜族が挑みあった時の話でございますので。

 現在、我等の力もかなり上昇しておりますので、魔王様がその気になられれば案外簡単に竜界を掌中に治める……その気はございませんか? 然様でございましたか、失礼しました。

 無敵と称される竜族ではありますが、弱点なる物もございます。

 本性である竜化の時には鱗が逆さに生えており、人化の時には体のどこかに残された鱗が一枚あるそうで、その鱗に剣を突き刺せば絶命すると言われております。

 ええ、この話も初代魔王様が御立ちに……もう、宜しいですか? 然様でございますか。

 竜族の体が鋼の如くと謳われており、この地に於いて竜族以上に外傷を受けにくい種族はおりません。

 しかし、竜族内におかれましては、雌よりも雄の方が体は硬いそうでございます。

 また、我等魔族に劣るながらも有する魔力はなかなかの強さを持っております。

 魔力だけで見れば、我等魔族は他の種の追従を許しません。

 妖精族と同等か、若干上回る程度かと思われます。

 肉体組成が可能……ええ、然様でございます。

 大公からお聞きしたのですか? さすがは魔王様でらっしゃる。

 覚えがよろしい……え? お世辞はいらぬ? 滅相もございません、本気でございます。

 魔王様を謀れば、この身は忽ち塵と化しましょう。

 は? 大公達はまだ健在? はて、おかしな事が……さて、続きを進めてまいりましょう。

 誤魔化すなどと、とんでもございません。

 先も申しましたが、雄の体は雌よりも硬いのですが、雌は雄よりも強い魔力を有しております。

 雌だけを見れば、上位の妖精族をも上回る力を持っているやもしれませぬが、我等魔族から見れば格段に劣りますね。

 竜族が、特に雄がこのように強靭な体を持つ謂れは多々ございますが、一番有力なのは竜族の繁殖行為ではないかとの説でございます。

 と申しますのも、竜族の雌は他者から触れられる事を極端に厭い、下手をすれば繁殖相手の雄を傷つけ、うっかりすれば殺す事もあるそうでございます。

 あのような楽しい行為を厭うとは嘆かわ……私の意見は聞いておりませんか? 失礼致しました。

 また、雌がそのような有様ですので、雄も決死で挑んでまいりますから、竜族の繁殖行為は常に流血沙汰なのだそうです。


 人族と竜族、魔族と妖精族はそれぞれ対極となる種族でございます。

 柔な肉体と魔力を持たない種に対して、鋼の体と魔力を有する種族。

 人族と竜族はこのように対極しておりますが、魔族と妖精族は性質が対極しております。

 そろそろ時間となりましたので、魔族と妖精族については次回の講義にて説明いたします。

 ところで魔王様。

 先日、カレアナ国で流行っているという珍しい菓子を入手したのですが、宜しければ私の館にてご一緒にお茶でも。

 ええ、魔王様が菓子の類を好まれると聞きまして。

 お茶の時間をご一緒していただけると。

 身に余る光栄でございます。

 おや、長殿いかがされましたか。

 油断も隙も? 何をおっしゃって……魔王様はこの後から執務?

 そのような予定は聞いておりませんが。

 あ………………。







 チッ

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