日常なお礼 ■ 09
拍手御礼のお話です。
たまにパラレってますが、気にしてはいけない。
たまに本編と時系列がずれているが、気にしてはいけない。
ある日、オラ達一族を取り纏める上司ってのが出来たんべよ。
黒い髪をした人間の娘っこみたいだったが、魔力が凄く強くて眩しかったなぁ。
そんの上司がオラ達を見て、顔を顰めると一言『臭い』とぼやいたんだな。
全く失礼な娘っこだったからよ、喰おうと思ったら淫魔の長がすんげぇ怒るからオラ達我慢してやっただ。
したらよ、その娘っこ調子に乗ってオラ達を虐待しだしたんべ?
酷ぇ話だぁ?
まんず、熱い蒸気の篭った部屋への監禁だべ?
熱い蒸気は構わねぇんだけどよ、大勢で押し込められてるもんでよ、オラ達の体から吹き出てくるヌルヌルで押し合い圧し合いだからよ、これってば拷問だべ?
そんの虐待がやっと終わったと思ったら、次は熱湯の拷問だべよ。
熱い湯でヌルヌルが流れ落ちてスッキリしたのは良いんだけどもよ、その後オラ達皆で体擦らされたんだべよ。
自分の体を擦るだけならまだしもよ? オラ達、同じ一族だからってよ? 何でこいつ等の背中をゴシゴシ擦らねばならんべ?
皆で輪になって背中擦らされただべ?
オラ達に屈辱を与える虐待だべ?
擦る時に使うようにって渡された『スポンジ』ってぇのは擦ると気持ち良かったけどもよ?
擦るたんびに、皮がボロッボロッ取れたんも面白かったけどもよ?
面白かったから、ちょっとムキになって後でヒリヒリとしたけんどもよ?
擦り終わったらまた熱湯の拷問だべ?
擦った所が染みて痛かったんだからぁ、立派な拷問だべな?
それから『石鹸』ってぇのを渡されて、また自分の体を擦ってから皆で輪になって背中を擦ったべよ。
そん時は『優しく擦るように』と命令されたべよ。
上司だからってぇ、何でも命令すれば良いと思ったら大間違いだってぇ事を娘っこに教えてやろうとしたら、蛇族の長がすんげぇ楽しそうな笑顔でオラ達を見てんだべよ。
オラ達はもう終わりだと思っただ。
この渡された『石鹸』ってぇのは、蛇族の長が作ったんに違ぇねぇ。
花みてぇなとっても良い香りをしてても、これはきっと猛毒に違いねぇ。
オラ達、人体実験ってぇのをさせられてんだって気付いたから、皆で泣きながら体を擦っただよ。
泡を流してサッパリした時には、拷問部屋ん中は花の香りでちょっとだけ良い気分になっただ。
一族抹消の餞だべか。
拷問部屋を出ると飯が用意されてただ。
これが最後の晩餐ってぇヤツだべか。
オラ達の飯は土なんだけどもよ、魔界の土は正直匂いが臭くて美味くねぇ。
妖精界の土は花の香りがして美味ぇって爺っちゃんが言ってただ。
知らない爺っちゃんだったけどもよ。
最初は、人体実験だべよ、どんな毒が混じってるだべよって皆手を付けれんかったんだけどもよ、喰えって言う娘っこの後ろで鳥族の長が腕組んでオラ達を睨んでるんだべよ。
オラ達は覚悟して喰ったべ。
んだけど、こん時用意された飯は花の香りがして、今まで食べた中で一番美味い飯だったべよ。
本当に最後の晩餐だと思って泣きながらオラ達は喰った。
そんな虐待が今日まで続いててよ、明日も明後日もその先もずっと続くみてぇだ。
支給されてる『石鹸』てぇ言うのを使った人体実験もずっと続いているんだけどもよ、この毒はいつ効果が出てオラ達はいつ消えちまうだべか?
この間も娘っこがオラ達の所へ来て『臭くなくなったし、寧ろフローラルになったねぇ』と笑ってたべよ。
フローラルってなんだべ。
飯も花の香りがして美味ぇんだけどもよ、最近は娘っこのが良い香りがしてて美味そうだべ。
たまに来る娘っこを涎を垂らして見てたらよ、獣族の長がよ、涎を垂らした双頭双尾の狼がよ、尻尾すんげぇ振りながらオラ達を見てるもんだからよ、慌てて出てた涎を拭いたべよ。
今日もオラ達は魔王様のお庭を弄っているんだべ。
上司である娘っこが好きな花を植えて良いって言うから、思い残す事が無いようにって思い遣りなのかもしんねぇ。
たまに一族のモンが数人連れ出されて、暫くすると戻されたりもすんだけんどもよ、何してんだべと聞けば色々な長の領地へ行かされて土弄りをさせられてるらしいんだべよ。
オラ達は喰った土の養分を魔力にしてカスを吐き出してんだけんどもよ、その吐き出したカスと土を混ぜて好きな花を植えてくるってぇ仕事らしいべ。
やってる事は魔王様のお庭と同じだべな。
ちょっと前は魔王様も虐待も無かったけんども、娘っこが上司として来る前に魔王様も来たって話だべ。
虐待されてなかった時よりも、虐待されている今のが良いかもなんて思ってきているオラ達だべ。
あの『石鹸』と『土』はオラ達一族を堕落させる毒だったんだべっ!!
――以下、蚯蚓一族の項目より抜粋――
魔物よりも多少ながらも知能を持ち、魔族よりも魔力の少ない醜い者達を蔑んで、同じ魔族でありながらも下位層故に醜族若しくはその悪臭から臭族と揶揄される一族がいた。
六代目の魔王が即位してから暫くした後、その種族の余りの悪臭に我慢が出来なかった魔王様は、魔王の命令として強制的にサウナと風呂の習慣を義務付け、汚物紛いであった食事の見直しを行う。
土を喰い魔力として摂取できない物を排出するという醜族の習性を利用し、魔王殿内にある魔王所有の庭から始め、土地から悪臭が無くなる事を確かめた後に魔王殿の敷地、王都、各領地へと醜族を派遣しては土壌改良を務めさせる。
この効果により、現在魔界で悪臭のする場所は皆無と言っても過言では無い。
記録を残す為に魔王様へ表題を仰ぎに行った所、躊躇う事無く『ミミズ堆肥化』とのお言葉を頂けた。
後に、醜族若しくは臭族と揶揄されていた一族は、この表題により蚯蚓一族と称されるようになり、以前は悪臭の為に嫌厭されていたが、花の香りを纏うようになってからは敷地内で世話をする魔族も増えつつある。
最近では、魔王様自ら作られる真珠粉を混ぜた土を食している為か、魔王様に似た香りを持つ者も増えておりその人気は鰻上りである。
思うように動いてくれないサナリ拍手ネタへの伏線ネタでした。