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ハーミット  作者: 銀骨人
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俺達は2人で1人だ。

 俺と同じ顔をしたクロトは、少し怪訝な顔をしながらも俺の話を真剣に聞いてくれた。


 「だいたい話は分かった、信じられない部分もあるけど、住む所がないなら俺の家に来るか?

 情報集めは俺も得意だし手伝ってやるよ」


 「良いのか?俺自身も信じられない事を言ってる自信があるのに」


 「何だ嘘なのか?」


 「嘘じゃない、身分を証明するものが何もないから、住む所を貸してくれるのも本当に助かる。

 でも、何もかも助けてもらうのは申し訳ない、情報収集は俺も得意だから自分でなんとかする」


 「それで、間違った情報を信じて犯罪に手を出す事になったんだろ」


 「そう言われると、反論のしようもないな」


 『申し訳ない〜』『アタシも反省してるわ』


 クロトには聞こえてないけど、ヂウとカカも反省していた。


 「それに、俺も善意だけで言ってるんじゃない、ヴラドにも俺の手伝いをして欲しいんだ」


 「手伝い?」


 「嘘を言っても直ぐにバレるから正直にいうが、俺の犯罪を手伝って欲しい」


 「犯罪を手伝えっていうのか?」


 「そうだ、俺はヴラドとの出会いは運命だと思ってる、たぶんヴラド以上の相棒はいない」


 本当なら考える必要なく断るような誘いなのに、俺はクロトの事を信用しても良いと思っている。


 それはクロトも同じなんだろう、俺が答えるまで真っ直ぐに見つめてくる。


 クロトの瞳は犯罪者特有の濁った暗さと覚悟を決めた者の輝きが同居していた。 


 「どうしてそこまで俺を信用出来るんだ?」


 何となく聞いてしまった俺の質問に、クロトはニッコリと笑って。


 「はははっ、他人の様な気がしないんだよ」


 と、自分の顔と俺の顔に交互に指を指した。


 「わかった、住む所に情報と貸しが大きい気がするけど、俺が出来る事をして返すよ」


 「ありがとう、何となくヴラドならOKしてくれると思ったよ」


 OKが何か分からないけど、俺との話がまとまったと確信したクロトが自分の話をしてくれた。


 話を聞き終わって、クロトがしたい事を理解する事が出来た。


 「要は復讐か、成功しても虚しくなるだけだぞ」


 「分かってる、俺が少し減らしたって次から次にキリがないし、俺も同じ所まで堕ちる」


 「分かってるならいい、俺はクロトの影にでもなれば良いのか?」


 「近いけど違う、表の顔の根津玄人ねずくろとと、裏の顔のヴラドを、お互いが使い分けて行動するんだ、力を合わせればきっと上手くいく」


 「慣れるまでごちゃごちゃしそうだな」


 「面倒事を全部ヴラドに押し付けるつもりはない、俺もヴラドとして手を汚す。

 ヴラドも玄人として、普通の生活もして欲しい。

 それに妹に手を出した3人だけは、絶対に俺が手をくだしたい」


 「そういう事なら、クロトに俺の家族を紹介しないとな、ヂウ、カカ来てくれ」


 『こんにちは〜クロト〜』『よろしくねクロト、本当にヴラドにそっくりね』


 「うわ、なんか急に頭に声が、それにネズミとカラスが突然現れた!」


 「ネズミのヂウで、カラスのカカ、2体は意思疎通の能力で離れてても会話が出来るんだ。

 クロトともパス繋げたから、2体といつでも会話出来るから」


 クロトがヂウとカカをじっと見つめてから、2体の頭を優しく撫でた。


 「まるで電話だな、ヂウもカカもよろしくな。

 じゃあ、警察の待伏せは失敗だし、ここにいる意味もないから帰るか」


 「うッ、俺のせいでごめん」


 「知らなかったんだから仕方ない、気にするなよ、早く帰ろうぜ」


 そして、バイクというモノに乗せてもらい、クロトの家まで帰った。


 後ろに乗せてもらったが、なんで車輪が2つで倒れないんだ、バランスを取りながら乗っているのか?


 移動速度もそこそこだし、自分で走るのとは違う風を受ける感覚が気持ちよかった。


 「ただいま」


 クロトが声をかけて家に入る、俺は誰にも気づかれない様にこっそりと、教えて貰っていたクロトの部屋に先に入る。


 クロトの部屋に行く途中、話に聞いていた妹の部屋の前を通った。


 中からの気配はとても弱々しく、クロトが心配してる気持ちが分かる。


 クロトの妹は、死ぬ力がないからただクロトと祖父に生かされている。


 このままじゃ妹もクロトも幸せにはなれない、そう感じたからクロトは復讐に駆り立てられたんだろう。


 クロトの目的は妹に手を出した3人だ、それ以外はは情報を集めた結果知ってしまった悪を予行練習として相手にしているだけ。


 本命に手を出せば、どうしてもクロトは疑われてしまう、だからアリバイ作り方相手の追いつめ方に殺し方を、3人の為に考えて慎重に確かめていた。


 「これがパソコンっていうものか、これで色んな情報が手に入るなんて不思議だよな」


 「俺からしたら、ヂウとカカの情報収集能力の方が不思議だから」


 俺がパソコンを興味深く観察していると、クロトが口に出していた言葉を拾って返事を返してきた。


 「こんな感じで情報を集められるんだよ」


 そう言って、机の上に置いてあるパソコンのボタンを押す、四角の板がそれぞれ淡く光り文字や記号が表示される。


 ヂウより少し小さい何かを動かすと、文字や記号が変わり、たぶん何かの文章が四角の板の下から上に動く。


 「そういえば、ヴラドは会話は出来るけど読み書きは出来ないんだったな。

 この画面に映ってるのが全部情報なんだよ、中には嘘や間違いも混じってるけど、それを読み取って真実を見つけるんだ」


 「俺達と似たような事をやってるんだな、俺もカカが大まかに見聞きしたものを教えてもらって、ヂウに細かく調べてもらってる」


 俺はお互いがちゃんと協力し合えるように、アーサさんにも話していないヂウとカカの能力の一部をクロトに教えた。


 『アタシ達がやってる事が、こんなパソコンとかいう奴に負けてるなんて悔しいわ』


 『ボク、負けない〜』


 2体はパソコンに対抗意識を燃やしている。


 「いや、2人はパソコンにも負けてないよ。

 情報量は多いけど、その分本当か嘘か見分けるのが大変だし、違法な手段で手に入れた情報は証拠としては使えない。

 その点、カカの見聞きした情報は目的に対して信憑性が高いし、ヂウなら物的証拠だって持ってこれる。

 どれが1番優れてるかじゃなく、全部使って1番良い結果を出すんだよ」


 『ありがとう〜クロト』『いい事言うじゃない』


 クロトの言ってる事は、実に合理的でまともな考えだ、復讐さえ考えなければ良い警察官になっていただろうな。


 警察官の役割はちゃん理解している、治安を守る兵士という推測はあながち間違いじゃなかった。


 「それで、これから俺はどうしたらいい?」


 「大変だけど、ヴラドには最低限の読み書きを覚えてもらう。

 俺のアリバイを完璧なものにする為に、ヴラドには代わりに仕事に行ってもらうから」


 「読み書きか、どのみち必要になる事だから頑張るよ」


 「ありがと、本当はヴラドが動いてくれた方が確実だし楽なのに」


 「俺は人を殺すのが好きな訳じゃない、クロトの気持ちは聞いているから理解してるつもりだ。

 それに、俺の世界の方が法なんて当てにならないし命が軽かった。

 復讐で殺される奴も、返り討ちにあう奴も指の数じゃ足りないくらい見てきたさ」


 「とにかく3人の始末はヴラドの勉強次第だ、その間に俺達の裏での立ち回りを慣らしていこう。

 今日取り逃した詐欺グループは、少し警戒心が強くなってるかもしれないけど、放っておいて被害が増えてほしくないし。

 ヴラドが顔を見られてるから、俺と勘違いして変な動きをさせても困るしね」


 「分かってる、そいつらならカカが捕捉してるし、懲りずにネットっので募集かけてるんだろ。

 俺のせいで被害が増えるのは嫌だし、きっちりと始末する」


 俺の意気込みにクロトが頷いて、ネットで募集されてる場所がカカの確認した場所と同じで、間違いないみたいだから、すぐに動く事にした。


 これは、俺がクロトと根津玄人を共有した初めての裏の仕事だ、失敗は出来ないな。

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