プロローグ
ギルド内の酒場は、いつものように賑やかだった。
冒険者たちの笑い声や、酒杯がぶつかる音が響き渡る中、ハリソンはカウンターに腰掛け
彼の前には、仲間の冒険者たちが集まり、情報交換兼飲み会が行われていた。
「聞いたか?あの面白い凸凹コンビの話」
隣に座る冒険者が声を潜めて言った。
「どんな連中だ?」
ハリソンは興味深げに尋ねた。
「一人は犬耳の好青年で、もう一人の保護者を名乗っていてな
面白いことに、その少年は青年の方を『番犬』と呼んでいるそうだ」
ハリソンは眉をひそめ苦笑した
「番犬、か…
一体どんな関係なんだろうな?」
「それが、どうやらただの主従以上の関係という感じらしいぞ?
犬耳の方は、少年を守るためにどんな危険にも立ち向かうらしい
まるで本物の『番犬』のようにな…」
「なるほど、興味深いな。」
ハリソンは酒杯を傾けながら、話の続きを促した
「それだけじゃない
あの二人、かなりの腕前らしいぞ
特に犬耳の方は、武器も魔法も達人で、どんな敵でも一瞬で倒してしまうとか」
「それなら少年の方は?」
「そっちは犬耳よりかは弱いが、それでも強い方
って聞いたぞ?
どっかのバカ……たしか、ギメルランクだって噂らしいが、喧嘩ふっかけてそいつに負けたって聞いたからな」
ギメルって言ったら…下から3番目だが
そこそこの実力者だ
安定した実力で、そのランクのまま引退出来たら
御の字
逆に燻るような実力者が多くもいるが…
「そんなに強いのか…だが
何でソイツは『番犬』なんかと一緒に居るんだ?」
「それは誰にもわからない…
だが、二人の強さは本物だ
特に薬草採取に関してはズバ抜けていい
ティエラドラゴン種にしか咲かない
特殊薬草があるだろ
アレを採取したのが100束だそうだ
熟練でも10束が限度だと言うのに」
ハリソンはその話に興味を引かれた
彼自身も数々の冒険を経験してきたが
そんなランクと実力が合わない冒険者はそう居ない。
「その二人、今どこにいるんだ?」
「最近はこの辺りで目撃されているらしい
もしかしたら、近いうちに会えるかもしれないな」
話は次第に逸れていき、最近の噂話に移った
「そういえば、勇者が逃げ出したって話、聞いたか?」
「勇者が逃げ出した?
それは一大事だな…」
ハリソンは驚きを隠せなかった。
「そうなんだ
どうやら、何か大きな問題が起きたらしい」
「具体的には何があったんだ?」
「詳しいことはわからないが、勇者が突然姿を消したらしい
城中が大騒ぎだそうだ
しばらくしたらウチにも捜索隊や目撃情報が集められるだろうな」
ハリソンは酒杯を置き、真剣な表情になった
「勇者がいなくなったとなると、俺たち冒険者にも影響が出るだろうな…面倒な事だ」
「その通りだ…だから、今は情報を集めることが重要だ
何か手がかりがあれば、すぐに動けるようにしておかないとな」
ハリソンは頷き、仲間たちと共に情報収集を続けた…
新たな仲間との出会い、そして勇者の行方…
ハリソンの心は不安で揺れていた…
その夜、ハリソンは酒場を後にし、星空の下を歩きながら考えた
犬耳の青年とその少年、そして逃げ出した勇者
これからの冒険がどのような展開を迎えるのか
一冒険者である彼にはまだわからなかった
とにかく、最近は王族の傾向も見なくてはならなくなった、頼むから平穏な生活だけはさせて欲しいと切に願うばかりだ