-97- 本物
いつやらの短編集にも登場した骨董屋である。^^ 朝からいつやらも登場した骨董マニアが開店前の店の前で折り畳み椅子を広げて座っている。
「そろそろだな…」
誰に言うともなく呟き、骨董マニアは腕時計を見る。開店は過去の記憶によれば、そろそろだった。^^ その五分後、店主が店内側のカーテンを開け、電動シャッター戸を上げた。
「ほう! リホームしたんだな…」
骨董マニアは独りごちた。記憶では板戸だったからだ。店主が中の板戸を開け店の外へ現れた。
「おはようございます…」
「ああ、いつやらの…」
「はい。また懲りずに寄らせて頂きました」
「それはそれは、朝早くから…」
「いい掛軸があれば、また求めようと思いまして…」
「ああ、以前お越しの折りは猿翁寒山の掛け軸でしたな…。もう一幅、いいのがございます」
そう言うと、店主は骨董マニアを店内へ招き入れた。
「どうです、人間国宝、白峰里舟の真筆です…」
「ははは…まさかっ!! り、里舟は美術館でしかお目にかかれないはずですが…」
「今ですとね…。これは里舟の若い頃の作でしてな。とはいえ、筆の才は今と同じです」
「これ、いかほどで…」
「さよですな…。お手持ちでお困りにならないくらいで結構でございます」
店主がそう言った瞬間、骨董マニアは、こりゃ、贋物だな…と直感した。しかし、以前のこともある。一応、買っておくか…と数万円を取り出した。店主としては、二束三文の掛け軸が数万円…という儲けたいい気分だった。
「これでは…」
「はい、確かに…」
店主は代金を受け取ると、掛け軸を外して巻き、木箱に収納すると骨董マニアに手渡した。
それから数日が立った骨董マニアの自宅である。
「は、はいっ! さようで…。ええ~~っ! ほ、本物ですかっ!!」
骨董マニアは騙されたとは思ったが、確認のため鑑定に出しておいたのである。
このように、うっかり贋物と思っていた物が本物ということもある訳です。だから世の中は不可解なんですね。^^
※ 白峰里舟は猿翁寒山と同様に、私が創作した有名絵師です。^^
完




