-94- のんびり
うっかりのんびりしていると、慌てることになる。今の世の中は一瞬の隙を許さないほどシビアー[手きびしい]なのだ。
とある町役場の財政課に勤務する貧田は来週に迫った予算要求のヒアリングをうっかり二週間先と勘違いし、のんびり勤務に励んでいた。
「貧田君、付表は出来ているのか?」
課長の豊畑がそれとなく貧田に訊ねた。
「いいえ、まだ二週間ありますから…。そろそろ作成しようかとは思っていますが…」
「なんだって!? ヒアリングまで一週間だよっ!」
「ええ~~っ! そんな馬鹿なっ!」
「そんな馬鹿も、こんな馬鹿もないよっ! 馬鹿なのは君だよっ!!」
のんびり構えていた貧田はニワトリが追われて逃げ回るようにバタバタし始めた。バタバタしてもデスクの上が散らかるだけである。^^
「急いでくれっ! もう出来てると思ってたんだが…」
豊畑は慌てる貧田を呆れるように見遣った。
「は、はいっ! 急いでやりますっ!」
もはや貧田には、のんびりしている時間はなかった。
それから一週間、貧田の残業の日々が始まった。有難いことに超過勤務手当だけは頂戴できたから、貧田としてはせめてもの救いとなった。残業が終わり、貧田は美味いラーメン定食でも食うか…と、暗くなった課を出ると、行きつけの店へと向かった。
重要な予定や用件がある場合は、のんびり構えず、ゆとりをもってコトに当たる・・というのが、相場のようです。^^
完




