うっかりユーモア短編集

－６８－ 信用

　人を信用することは大事なことだが、時と場合によりけりで、うっかり人を信用したばかりに豪(えら)い目に遇(あ)うことがあるから注意が必要だ。

　長年、政界を牛耳ってきた豚尾が、ついに地検特捜部により逮捕されるという事件が発生した。連日、マスコミ各誌やテレビで話題にされ、すっかり豚尾は気分的に落ち込んでいた。逮捕されて以降、豚尾に対する世間の信用は山の頂上から谷の底へ落とすような急激な低下を見せたのだった。恰(あたか)もそれは、豚尾をトンカツにして油で揚げるような辛辣(しんらつ)なものだった。＾＾　豚尾は、しみじみと遠い過去を想った。

『成りたての頃の方がよかったな…』

　初当選直後の自分の姿を瞼(まぶた)に浮かべ、豚尾は涙に暮れた。

　人の性分は多かれ少なかれ、地位や名声を得ると変わるものです。信用を無くすほど変わらなければいいのですが…。涙に暮れたあとでは、もう遅いのです。＾＾

　　　　　　　　　　　　　　　　　 　完