-41- 春の嵐
とある夕方である。竹川は、いつもと同じように洗濯物を外で干した。その日はコトもなく平穏に終わった。
次の早朝、異変が起きた。竹川が激しい風音に目覚めると、サッシ窓の外は春の嵐の風雨で大荒れに荒れていた。
「台湾坊主か…」
竹川は独りごちた。台湾坊主とは春先に多く発生し、急激に発達しながら日本列島を通り抜ける温帯低気圧のことである。温帯低気圧とはいえ、風の強さは20m/sは優に超える猛烈な風が吹く。竹川は少し驚きながら外へ出た。軒に干した洗濯物は哀れにも吹き飛ばされ、地面へ落ちて汚れていた。
『しまった!』
うっかりしたな…とは思えたが、あとの祭りである。竹川は仕方なく洗濯機でもう一度、洗濯物を水洗いし、室内で干すことにした。よくよく考えれば、天気予報で事前に春の嵐を予知していれば、対応して室内で干していたかも知れなかったのである。
『まあ、いいか…』
何がいいのかよく分からないが、竹川はいい加減に自分を納得させ大欠伸を一つ打った。どこか自分が間抜けな男に思えたが、竹川にすれば、まあいいか…となるのだった。
自然現象だけは、うっかり出来ませんから、洗濯物を干す場合は、事前に天候の確認をした方がよさそうですね。^^
完




