-34- 手抜かり
簡単なことを、うっかり手抜かりし、全てをダメにした小槌は、すっかりテンションを落としていた。その小槌を後輩職員の釣竿がソォ~っと慰めた。
「小槌さん、次がありますよ…」
後輩に哀れっぽい眼差しで言われては、さすがに片無しだ。
「ははは…どうも思っとりゃせんよ」
体裁で呵ってみても、心は逆冷えしている小槌だった。そこへ課長の布袋が現れた。
「小槌君、この前のミスな。ありゃ正解だったわ。それにしても、よく先々を考えられたな…って、弁財部長が褒めておられたぞっ!」
手抜かりしたことが、返って先々の好結果を生んだ瞬間だった。小槌は、ぅぅぅ…よかった! と心中で思ったが、億尾にも出さず静かに言った。
「そうでしょう、やはり…」
釣竿と布袋は、大したもんだ…と小槌に一目置くように小槌を見た。一目置かれた小槌は満更、悪い気はしなかったが、したり顔でデスク椅子を見ずに座ろうとした。しかし、デスク椅子が後ろ向きになっていたため、尻餅をつく破目になってしまった。その瞬間、釣竿と布袋は、やはりこれだけの男か…と盤上に置いた一目を碁笥へと戻した。^^
手抜かりしやすい性格だけは変えられないようです。^^
完




