-3- 和製英語
鯔海は和製英語に弱い男だった。
とある大ホールで歴代会長を称えるイベントの講演が行われている。
「えぇ~~で、ありますから、今後とも創業者を始め、歴代の会長をリスペクトし、尊敬して参りたいと思う次第でありますっ!」
現在の会長として堂々と檀上に立った鯔海だったが、うっかり自分が言った言葉遣いの間違いに気づいていなかった。
「ははは…おいっ、そんなに尊敬しなくてもいいのになぁ~」
ホール会場の後方に座った二人が、ボソボソと呟き合った。
「それは言える…。おいっ、社長じゃなくてよかったんじゃないか。ははは…」
「そうだな、社長なら我が社は右肩下がりだ、ははは…」
二人は大声で呵う訳にもいかず、声を潜めてニンマリ顔で小さく哂い合った。そのとき、一段離れた斜め後ろの席で咳払いをするサングラスの男がいた。後ろの席に社長がお忍びで来ていたことを二人は知らなかったが、咳払いに思わず沈黙した。ただ、顔だけはニンマリ顔のままだった。^^
短いお話となりましたが、このように、和製英語は意味をよく理解して話さないと、大恥を掻くことになります。^^
完