-27- 伝言
伝言しなかったために、とんでもない結果を招くことがある。
とある山村の町役場である。春の人事異動が発令され、昇格した者はウキウキと、昇進を見送られた者はスゴスゴと各々の職場へ異動していった。
「尾豚さん、管理職になったらしいわ」
「そうそう、私も聞いた。管財課の課長補佐だそうね…」
「私は牛毛さんかと思ってた…」
ポカポカ陽気の木陰で二人は昼食を食べながら話をしていた。
「牛毛さんは現状維持らしいわ…」
「早い話、万年、ステーキ?」
「それは言い過ぎなんじゃない」
「尾豚さんの生姜焼きと豚汁には、かなわないわよ」
「ビーフシチューも美味しいんだけどね…」
好きなことをゴチャゴチャ二人が話していると、そこへ牛毛がウキウキしながら通りかかった。
「ああ、君達か…。僕、今度、管財課に異動になったんだ、よろしくっ!」
「管財課ですか? 管財課は尾豚さんじゃ…」
「なんだ、広報、見てなかったの? 尾豚はこのままこの課だ…」
「そうなんですか? すみません…」
「なにも謝ることないよ。それよかさ、伝言、聞いてなかった?」
牛毛は少し偉ぶった言い方をした。
「いえ…」
「君達、四月から秘書課だよ。引継ぎがあるんだろ? こんなとこで、のんびりしてていいの?」
「ええっ!!」「…!!」
「人事の鹿川が言い忘れたのか…。じゃあ、僕は急ぐから」
牛毛が去ったあと、二人はバタバタとニワトリの羽音ように慌て出した。
のんびりした田舎らしい人事異動の一コマでした。^^
完




