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-24- 雨具

 久しぶりの旅に出た大原は、とある観光地で快適な旅を楽しんでいた。その地は、かなり有名な観光地で、多くの観光客でごった返していた。まあ、人の賑わいがあるのは悪いものではない…と、アチラコチラを散策しながら楽しんでいた大原は、ふと奇妙な銅像に出くわした。

「あの…アレは?」

「ああ、アレですかな。アレは最近、建立されたお釈迦様の立像ですだ…」

 銅像の前の土産物店で訊ねると、店主は(わら)いながら説明した。

「どこか、物珍しいお姿をされてますが…」

「現代作家さんがお造りになりましてのう、そこいらで見られる仏様とは、ははは…少し違いますだ」

 どこから見ても有難さのない立像の姿だったが、それでも立像の前には賽銭箱だけは置かれていた。天気も快晴で気分が高揚していた大原は、少額貨幣を賽銭箱に投げ入れると立像に合掌した。すると、それまで雲一つなかった青空が俄かに掻き曇り、大粒の雨がポタッ・・ポタッ・・と降り出した。朝の出がけは晴天だったから、大原は雨具の用意をしていなかった。困ったな…と、土産店へ駆け込んだとき、店主は小さくな声で囁いた。

「妙な仏様でしてのう。人が手を合わせよりますと雨が降るんでごぜぇ~ますだ…」

 よく見ると、土産店の(のき)には大きな傘立てがあり、色とりどりの幾本もの傘が立ち並んでいた。

「どうぞご遠慮なさらず、中からお好きな傘を一本、お使いなされまし…。お返しにならずとも結構でごぜぇ~ますだ…」

「いや、それでは…」

「さよ、ですか…。では、お土産の一つもお求め下せぇ~まし…」

 店主にそう言われ、大原は土産用の煎餅を買うと、傘立ての傘を一本頂戴して店を出た。

 雨具をうっかり忘れたことで、いろいろなことが起こる・・という世間のお話でした。^^


                  完

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