-2- 優先順位
とある区役所のとある課内である。どちらを先にするか…と、課長補佐の室川は一瞬、迷った。アレを先にすればナニが後回しになる。かといって、ナニを先にやれば当然、アレが後回しになる…と。誰が考えてもそうなる結論だが、室川は判断を迷ったのである。ただ、うっかりミスは、アレ、ナニとも許されない重要案件だった。迷った挙句、室川は上司に訊ねてみることにした。
「そりゃ君、ナニだろ。この課に直接、影響する案件だからな…」
「はあ…」
直属の上司である課長の伏山にそう言われ、室川はナニから先にしよう…と決断した。ところが、である。そこへ部長の桑尾が偶然、通りかかった。
「おはよう、室川君っ!」
「あっ、部長。おはようございます…」
「君さ、アレはどうなってるの? この部に直接、影響するアレなんだから…」
「はあ、急ぐますっ!」
「頼んだよっ!」
桑尾に念を押され、室川はナニよりアレを優先しよう…と、考えを変更した。そこへ又、課長の伏山が現れた。
「室川君、諄いようだが、ナニを急いでくれよっ!」
「えっ? 部長がアレを頼むと今、言われましたが…」
「ふ~ん、部長が? それならアレだな…。しかし私は、ナニを急いでくれと部長に言われたんだがなぁ~」
伏山は首を傾げた。
「妙ですねぇ~?」
「ああ、妙だ…」
この結論が出たのは、それから数時間後だった。部長の桑尾が、うっかりして優先順位を間違えていたのである。副区長は桑尾にアレを先に…と命じていたのだが、それをうっかりナニを先に…と桑尾が勘違いしていたのである。重要案件だけにコトは緊迫しそうになったが、室川の部下の係長、絹崎が、そういうこともあろうかと…と、アレ、ナニの両方ともやっおいたことで事無きを得たと、話はまあ、こうなる。
うっかりも、コトによりけりで、注意が必要だということでしょうか?^^
完