-16- 油断
過去、他の短編集で何度かタイトルにした油断である。
うっかり油断しようものなら逆転するのが今の世の中だから、一瞬でも気が抜けない。と、まあそうは書いてはみたが、平和な日本では悲惨な戦争惨禍を被っている国々とは違い、天国そのものなのだから心底から喜ばねばならないだろう。ただ、この平和意識が薄れ、軍事費が増大されているのは明らかに意識的な油断に違いない。戦闘行為を禁じた憲法を保持する我が国が、実弾射撃演習で誰を撃つのか? 誰に対して戦車で砲弾を撃つのか? が、私には皆目、分からない。防衛省→保安省、陸上自衛隊→陸上保安庁、海上自衛隊→海上保安庁、航空自衛隊→航空保安庁くらいでいいのでは? と思います。^^ 油断のならない国際情勢なら、いっそのこと俎板の鯉のように開き直って油断した方がいいのでは…とも思えます。^^ 核の時代、有事になれば何をしたって地球は放射能で死の星になるんですから…。^^
都庁のとある課に勤務する角岡は油断する男だった。意識的に油断している訳ではなかったが、生まれついての油断癖は多くの勤める同僚から不思議がられていた。あれじゃ、出世はおぼつかないよ…といった他人目線である。
「角岡さん、課長がお呼びです…」
「はい…」
毎度のことで、角岡はまた課長の飛川に呼び出された。課内では[呼び出しの角岡]の異名を有難くも頂戴している角岡だった。
「…なんでしたでしょう、課長?」
「なんでしたじゃないよ、角岡君。また10部、配布資料のコピーが足りないじゃないかっ!」
「あっ! そうでしたか、どうも、すいません。すぐコピーしますので…」
「頼んだよっ! 今日じゃなく、よかったよ。それにしても君のうっかり癖は治らんなぁ~。どうすりゃ、それだけ油断できるのか、訊きたいくらいだよ、ははは…」
角岡は『何が、ははは…だっ!』とも思わず、『なぜだろう…?』と真剣に考えた。
「まあ、いい…。頼んだよっ!」
ようやく飛川から解放された角岡は自席のデスクへと戻った。その後、角岡がコピーした部数は、うっかりした多めの13部だった。^^
うっかりを、うっかりと感じない性格・・羨ましいですね。^^
完




