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-12- 準備

 準備は万端整った…と思っていても、うっかりした手抜かりがあるものだ。

 とある証券会社に勤める大口は、苗字のようにいつも大口を叩く男として会社の噂になっていた。それもそのはずで、彼が太鼓判を押した準備万端の読みには、必ずと言っていいほど見落としたうっかりミスがあったからである。

「大口さん、本当に大丈夫ですかぁ~?」

 信じられないような目つきで部下の小耳が訊ねた。

「いや、今度は本当に上がるっ!」

 大口は近々、上がるであろう先物取引の株価の高値を予見して断言した。

「本当ですかぁ~? 今度、上がらなかったら僕が責任とらされるんですから…」

 小耳は疑い深い視線で大口を(うかが)った。

「大丈夫、大丈夫っ! ちゃんと、準備したから…」

 大口は自信あり気に念を押した。

「そうですかぁ~~?」

 なおも疑うように小耳は大口をチラ見した。なんといっても、今まで大口が断言した予測が、準備不足で当たった試しがなかったからである。管理職もリストラ第一候補として大口に(まと)を絞り始めている矢先だった。

 その十日後、奇跡が起きた。ついに大口が準備して予測した先物取引の銘柄がストップ高をつけたのである。詳細を言えば、大口が準備していた予測には手抜かりがあったのである。ところが、その手抜かりが手抜かりで亡くなったのだから世の中の動静はどう動くか分からない。会社は大口の初めての予測大当たり? で大儲けした・・ということはなく、安値だった銘柄の買いつけを、うっかり忘れていた。いや、そういうより、大口の予測を信じず、買いつけなかったのである。会社の大儲けは夢と徒労で終結した。だがしかし、大口はリストラ候補から外され、次の人事異動で会社の株価を予測するアド・ホックチームのリーダーに昇格したのである。

 秘めた才能が日の目を見た大口さん、よかったですね。うっかり準備をミスったことが大当たりとなることも世の中にはある訳です。^^


                   完

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