第27話 謎の道具、狙いは何
投稿ミスした結果、する予定じゃなかった二話投稿してしまいました。
一度投稿するとそれを非公開に戻すって出来ないのでしょうか……
翌日、昨日あった出来事を最近一緒に朝食を食べるようになったローゼリアに話した。
「公爵家の人間に、夜中の泥棒か。泥棒の方はともかく、公爵家所属の者の行動が謎だな」
「そうなんだよね。ローゼリアは心当たり無い? なんか丸い円盤状の板に針がついてる道具について?」
「ふーむ、恐らくは魔道具だと思うが私はそういうのには疎くてなあ……うちでいうとホルス宰相がその辺りに精通していたはずだ。この後聞きに行ってみるか」
「それは有難いけど、大丈夫?宰相さんでしょ? 忙しいんじゃ……?」
「なに、気にすることは無い。むしろ仕事の合間に息抜きができると喜ぶだろうさ。あいつはそういう人種だからな」
「そ、そうなんだ。じゃあ聞きに行ってみようかな?」
という話になって私はローゼリアに連れられてホルス宰相が仕事をしている執務室へと向かった。
部屋の中ではホルスさんの他にも王様のアーレンハルトさんも仕事をしていた。仕事部屋にやってきた私達を意外そうな顔で見ながら、王様が用件をたずねてくる。
「二人揃ってこんなところに来るとは、どうしたのだ?」
「うむ、今日はホルス宰相に用があってな」
「私ですか?」
自分の名前が出されるとホルスさんは手元の紙束から顔を上げてこちらにきょとんとした目を向けた。それから手元の仕事を片付けるから少し待って欲しいと言われて、王様の目の前にあるソファに腰掛けて待つ。その間にいつの間にかやって来たクラウスさんが私とローゼリアの分のお茶を淹れて持て成してくれた。
少しの間の、部屋にはペンが紙と擦れるカリカリという音だけが聞こえる時間が流れる。
暫くして、ホルス宰相がふぅと一息つく声が聞こえた。
「お待たせしてしまい申し訳ございません」
「とんでもないです、忙しいときに尋ねてしまってすみません」
「忙しいのはいつものことですから構いません。むしろいい気分転換になります。それで、どのような用件で私を尋ねられたのですか?」
「えっと――」
ホルス宰相に昨日あった出来事を話す。公爵家の人がダンジョンで怪しげな行動をしていた話で目を細めたり、夜中に泥棒が入った話ではおかしそうに口元を歪めたりしていた。
「という訳で、その公爵家の人が使ってた魔道具?らしき物の正体が分かれば目的も分かるかなと思ったんです」
「なるほど……それで私のところに来たという訳ですね。確かに私は趣味で魔道具の収集や研究をしていますからね。それならば、期待には応えなければいけませんね。アリサ殿、その魔道具の見た目の特徴をもう少し詳しく教えていただけますか?」
「ありがとうございます! 見た目はー、羅針盤で通じますか? 丸い円形の台座の中心に針みたいなのがついてる感じでした。文字が書いてあったようにも見えたんですけど、読むことまでは出来ませんでした。それでそれを、ダンジョンの壁だったり通路だったり、あとアイテム交換所だったりに向けて使ってました」
「羅針盤に針、ですか……」
「どうでしょう……?」
「…………」
顎に手を当てて目を伏せ無言になるホルス宰相。集中して考え込んでいる様子だったけど、少しして考えがまとまったのか顔を上げる。
「申し訳ありませんが、これだと断言できるものは思い至りませんでした。申し訳ございません」
「そう、ですか……」
「ただ――」
仕方ないかと諦めかけた私に、ホルス宰相が言葉を続ける。
「その魔道具の特徴と使い方の状況から察するに、ダンジョンの核――つまりダンジョンコアの場所を探知する場所なのではないかと考えられます」
「ダンジョンコア、ですか?」
「おや? アリサ殿のダンジョンにはダンジョンコアが無いのですか?」
「そうですね。うちでは使ってませんけど……あっ」
その名前に一つ、思い至るものが頭に浮かんだ。
ダンジョンマスターの力を色々と弄っているときにそんな単語を見た気がする。確かダンジョンの管理をアシストしてくれる補助管理システム、みたいなものだった記憶が――
「すみません、ちょっと確認してみてもいいですか?」
一言断りを入れてからダンジョンの管理画面を開く。
そうしてダンジョンコアという言葉を探していくと――見つけた。
ただ私の記憶は不完全だったようで、確かにダンジョン管理の補助をしてくれる物でもあったけどそれ以外にも重要な役割が存在していた。
それは――主不在のダンジョンの維持管理である。
例えば今の私のように飛び地に複数のダンジョンを持っている場合、両方の管理をする必要が出てくる。森のダンジョンの方はほぼ侵入者も無いし放置しても問題無いぐらいだけど、これがもっと沢山、加えてより人が訪れる場所だったならきっと目が回る忙しさだったはず。
そんな状況で活躍するのがダンジョンコアということだった。その名前の通り、主不在のダンジョンに限ってはそこのコア、核と言っても過言ではないアイテムなのである。
「であれば、アリサのダンジョンでその魔道具を使っても無意味ということか?」
「もし相手の狙いがダンジョンコアだった場合はそうなります。しかしあくまで私の予想でしかありませんので、そうだと決めつけるのもいけません」
「まあ確かにな」
「それとアリサ殿。こちらは限りなく低い、本当に可能性としての話だと思って聞いて欲しいのですが――」
「あ、はい」
「似たような魔道具に人探しを目的とした物があります。無いとは思いますが、公爵家がダンジョンマスターの存在を探している可能性も考慮しておいてください」
「っ!!」
私のダンジョンにはダンジョンコアは置いていない。それはつまり、ダンジョンの中でダンジョンコアを探すような行為は無意味だということ。果たしてそれが、排除対象として引っかかるのだろうか……? ダンジョンを壊すという意味では同義かもしれない。だからあり得るといえばあり得る。
でももし、ホルス宰相が言ったように私を探していたのだとしたら……それは間違いなく排除対象としてアクセサリーが起動するだろう。これについては断言できる。
だとすれば、公爵家の人は本当にダンジョンマスターである私を探していたのかもしれない……
ホルス宰相との話を終えて、長時間仕事の邪魔をする訳にもいかないのですぐに執務室を後にした。
ダンジョンマスターを探している件についてはかなり低い可能性だとホルス宰相には言い含められたけど、私としてはそっちの線が濃いんじゃないかなと想像している。
ローゼリアに自室に送り届けてもらった後は、すぐに王都ダンジョンの管理階層に跳んだ。
管理画面を開いて全体の様子を観察する。今日も今日とて多くの冒険者が訪れてあちこちの視点にダンジョンを探索する姿が映る。ただし、まだ最下層である五階層に到達した人はいないらしく今のところトップを走っているのは四階層を進んでいるパーティーのようだった。
アイテム交換所もそれなりに訪れる人が増えてきたようで、用意していたアイテムの在庫が一部かなり減っているのを確認する。さすがにまだ高額設定していたアイテム類は出ていないけど、少ないコインで換金できるアイテムたちはそれなりに交換されていた。
「ふむふむ、ここら辺は補充しておいた方が良さそうかな。後でスケルトン達に応援頼まなきゃ。それにしても、もう四階層か。もう?早いのかな?それともむしろ遅いぐらい? う~ん、基準が分からない。でも残すところあと一階層、そろそろ追加の階層とかも考えた方が良さそう? アップデートしないと飽きられちゃうしねぇ」
ぶつぶつと独り言を呟きながらダンジョンの管理者らしい仕事を進める。この作業は今のところ負担には感じていない。それどころか、ちょっと楽しいと感じているぐらいだ。それにこういうことを考えているのがちょっとカッコイイなと思っていたりもする。
「魔物との戦闘かあ……まあこの世界の冒険者にとってはそれが普通なんだよね」
新しい階層について考えたところで、ローゼリアから聞いた話が思い浮かぶ。
「でも私のダンジョンで積極的に殺し合いをさせるのとか、やってることがデスゲームのゲームマスターじみてるよね……それに魔物を沢山呼び出すのも、戦わせるのも気が引ける。となるとやっぱり五階層の反応で様子見するしかないかな、一先ずは」
王都に作ったダンジョンは基本的に罠や仕掛けを潜り抜けて宝箱からコインを手に入れ、それをアイテムと交換することを主としている――のだが、実は最後である五階層にだけは、ちょっと別の趣向を凝らしているのだ。そこでの反応が良ければ、魔物の配置について考えてもいいかもしれない。
「――っと、この人たちもうそろそろ五階層だね」
四階層の様子を映している視点に、最前線を走っていた冒険者の一団がついに五階層の手前に辿り着いた様子が映されていた。
「このまま五階層に行って――おっ、行きそう! ちょっと観察させてもらおうかな?」
その人たちは五階層に続く通路の手前で何事かを話していたが、遂には先に進むことを決めたよう出歩きだした。
記念すべき最初の五階層到達者の様子を観察するために一旦作業の手を止める。
「……あ、五階層担当に念の為伝えておこう」
さて、どうなるかな~~…………
不定期投稿、再開します。




