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聖女の攻略対象は私じゃない

そしてとうとうオフェリアも入学である。


「オフェリア様っ!!」


朝、屋敷まで迎えに来たテルセロの馬車で一緒に学校に着くと、入り口で待っていたらしいファティマが腕をブンブンと振りながらオフェリアに向かって走り寄って来た。

淑女教育は上手くいって、クラスの女子はグラシア様によって掌握されたという話だったのだが、オフェリアに対しては別問題らしい。


「オフェリア様!とうとうお会い出来ましたね!」

「ごきげんよう、ファティマ様」

「おはようございます、ファティマ嬢」


容赦なく間を詰めるファティマの前にテルセロが体をずいと割り込ませた。

ファティマがぷぅと分かりやすくむくれる。


「おはようございます、テルセロ様。オフェリア様との感動の再会を邪魔しないで頂けますか」

「ファティマ嬢。我が婚約者は筆頭伯爵家の令嬢です。分をわきまえて頂けますか」

「私とオフェリア様の仲ですよ?!分も何も…え?オフェリア様、私達もうお友達ですよね?!」


オフェリアはただにこりと笑って首を少し傾げた。

ザッと音が聞こえそうなほど、ファティマの顔色が青ざめて絶望的な顔になる。

え、そんなに?


「ファティマ様はクラスのお友達が沢山出来たと伺っております。私も見習って同学年のお友達を沢山作りますね」

「そうなのですよ、オフェリア様。私、オフェリア様との約束を守って沢山お友達を作ったのです!」


だから認めてくれ、と言わんばかりに両手を握りしめて訴えるファティマにオフェリアは内心ドン引きである。

ここはグラシア様に引き続きちゃんと躾をして欲しいところだ。

そんな願いが届いたのか、ちょうどグラシアとレオンが一緒に登校してきてその輪に加わった。


「まぁ、オフェリア様!今日からご一緒出来て嬉しいわ」

「あぁ、ようやく入学か、オフェリア嬢。皆、楽しみに待っていたぞ」

「レオン殿下、グラシア様、おはようございます。本日よりご指導頂くこともあるかと思いますので宜しくお願い致します」

「私達がオフェリア様にお教え出来る事があれば良いのだけど…」


うふふ、とグラシアが笑うと殿下もそれに同意する。

勿論こっちだって何か教わるつもりもないのだが。


「それで、こんな校門の前で何をしていたのだ?」

「ファティマ嬢がオフェリアに男爵令嬢らしからぬ態度だったので注意していたところです」

「私はお友達であるオフェリア様と感動の再会をしていただけですっ!」


そうファティマが訴えるとその場の3人が一斉にファティマを振り向いた。

顔は笑っているが目は全く笑っていない。

なんか怖い。


「まぁ、ファティマ様。お友達を作る為に去年なさってきたことをオフェリア様とも何かなさったのかしら?」

「いえ私とオフェリア様は3回しか会ったことこそありませんが、そういうのを超越した仲なのです」

「オフェリア嬢は君に勉強を教えてくれただけだろう。君は彼女の親切にその様な無礼な態度で返すとは烏滸がましいにも程があるぞ」

「オフェリアは私の大事な婚約者だ。その様に社交界のルールも守れぬ者と気安く話をさせるつもりはない。さぁ、オフェリア、入学式に遅れたら大変だ。もう行こう」


そう言ってテルセロに肩を抱かれ強引にファティマの前から連れ去られる。

承知している様にグラシアとレオンがファティマの前に立ちはだかってファティマに何か注意を始めた。


「オフェリア、ファティマ嬢にはくれぐれも近づかないように」

「近づくつもりなんてないけれど、あまり学校で身分を振りかざすのは皆様の名誉の為に良くないのでは?」

「ファティマ嬢の淑女教育の為だ。普段はこんな事言わないよ」

「それなら良いけど、ファティマ様はまだ社交性に問題があるままなの?」

「いいや。オフェリアが絡まなければ素直な令嬢なんだがな」

「私が悪いみたいに言わないで」

「俺の苦労をもう少し分かって欲しいところだが、大人しくしててくれればいいよ。教室まで迎えに行くから昼食は一緒に食べよう」


入学式が行われる講堂の席にオフェリアを座らせると、テルセロはオフェリアの頭をポンポンと叩いて去っていく。

なんだか今日は過保護だな?


お茶会などの社交に出るのは学生にあがってからだ。

その為オフェリアが正式に社交に出たことはまだないが、親族やテルセロの家のパーティに顔を出したり、母様の社交に付いていったりしていたお陰で多少の顔見知りがクラスにいる。

派閥とか家格とか面倒なだけだから正直友達なんて欲しくない。

だがここで無駄に一匹狼をキメるのも却って目立ちそうなのでオフェリアは適度に群れておく。


昼休みになると宣言通りにテルセロが迎えに来たので連れ立って食堂に向かうと、入口でまたファティマが待ち構えているのが遠目に見えた。

その瞬間テルセロに腕を引かれて物陰に押し込められる。


「本当に面倒だな」

「ファティマ様?」

「あぁ。仕方ない、食堂はナシだ」

「ご飯抜き?!」

「そんなわけないだろ」


裏庭のベンチに座らされ、ここでじっとしていろと言われて待っていると、テルセロが売店でサンドイッチを買ってきてくれた。

食堂のご飯も食べてみたかったが、ファティマに関わりたくないのはオフェリアも同意なので素直に従っておく。


「明日からは俺の分も含めて弁当持ってきてくれ」

「テルセロは今まで通り食堂で食べればいいじゃない」

「オフェリアを1人にするわけないだろ」

「私だって友達の1人くらい作るわよ」

「いいから昼くらい俺にかまわれておけ」


なんだろうね?

2年生になって何かに目覚めたのかね?

16歳になってだいぶ大人っぽくなったテルセロはお兄さんぶりたいのかもしれない。

結局朝は馬車でオフェリアの家まで迎えに来て、昼は2人きりでお弁当を食べ、帰りも一緒の馬車で帰るというガチガチに囲まれた生活が始まった。


そしてファティマだけじゃなく、何故かレオンやグラシア、側近の方々まで会えばなにくれとなくオフェリアを構いたがる。

高位貴族であるレオンやグラシアの誘いを断ることも出来るはずもなく、休日にはお茶会に呼ばれ、グラシアには私のお友達なのよとグラシアの取り巻きに紹介されてまた取り巻き達にも可愛がられた。

そんなにしょっちゅう社交に呼ばれるとドレス代もバカにならないと遠回しにお断りしようとしたらドレス付きで招待状が届く様になる始末だ。

去年までの生活が恋しい。

さっさと婚約破棄されてのんびり暮らしたいものだ。

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