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攻略対象達のコンサルタント

しかし次の週、オフェリアは急にテルセロの家のお茶会に呼び出された。

何かとうちに来たがるのでテルセロの家に行くのは久しぶりだ。

急にお茶会などと言われても着ていく服がないのだが、招待状と一緒にドレスまで送ってきたところをみるとどうしても行かなくてはいけないのだろう。

当日は侯爵家の馬車が迎えに来てテルセロの家に向かうとウンザリした顔のテルセロが出迎える。


「急に悪いな。でもオフェリアも悪いんだからな」

「私が何をしたって言うのよ」

「オフェリアがファティマ嬢に余計な事を言ったせいで面倒な事になってるんだよ」

「私が何を言ったって言うの?」

「学校で同性の同級生の友達を沢山作れって言ったんだろ?」

「それが?」


その続きはお茶会という名の作戦会議にやって来た殿下とその婚約者であるグラシア嬢、そして殿下の側近であるソコロ、タシトによって語られた。


「度々すまないな、オフェリア嬢」

「私でお役に立てる事でしたら喜んで」

「そう言ってくれると幾分助かる。実はファティマ嬢が君との約束を守る為に友達作りに躍起になっていてな」

「え?」

「あのフランクさで声を掛けるものだから少し問題になり始めている」


oh…

ヒロインてそのフランクさで周りに好かれる愛されキャラじゃないの?

いや、男子には好かれるが、女子にはめっぽう嫌われるのがヒロインなのかもしれない。

グラシア嬢も無邪気な方なので少し…と言葉を濁している。

どうやら一番当たり障りのない言葉でやんわり断るグラシアの言葉の意味が理解出来ず、グラシアに纏わりついているようだ。


「それで何か解決策はないだろうかと」


相談を、と。

そこで何で私に持ってくるのだ、と言いたいところだが、発端は自分の発言らしいのでお前のせいと問題になる前に解決しておきたい。


「まず確認なのですけど、ファティマ様と友達になるのに問題となるのは何でしょう?」


オフェリアの直球の質問に皆が目を見合わせる。

皆が躊躇する中、仕方なさそうにテルセロが発言した。


「家格に見合った社交性だろう」

「そうですね。前回もですが、クラスで一番下の位であろう男爵令嬢が、クラスで一番位の高い殿下や公爵令嬢で殿下の婚約者であるグラシア様に面識もないのにフランクに話し掛けるという事でしょう。では本来、殿下やグラシア様とお友達になるにはどの様な方法があるでしょう?」


このままだとテルセロが全部答える事になりそうなので、オフェリアは側近であるソコロに視線を向けた。

ソコロは慌てて背筋を伸ばすとオフェリアの質問に答える。


「まずは同格の友達を作り、誰かの伝手で少しずつ上の格の方と縁を拡げていくのが一般的ではないでしょうか」

「そうですね。つまりファティマ様は社交界のルールを知らないが故に上から攻め落とすという全く逆の方法で同性の友達を作ろうとなさっているので反感を買っている訳です。そもそも男爵家でちゃんと教育をなさって頂きたいものですが、まずはそのルールを教えて差し上げるのも上の方の勤めだと思って教育されてはどうでしょう?」


殿下の側近であるタシトが面倒くさそうに否定する。


「そんな事皆伝えていると思うのだが」

「ファティマ様は素直な方ですから、遠回しな言い方では伝わらないのですよ。それに誰がどんな家格なのかも分からないのだと思います。クラスの方の名簿はございますか?」

「書き起こすか?」

「お願いします。家格の低い順に」

「低い順?」

「攻略順を示すんです。この名簿の上から順番にお友達になってきたら私もお友達になって差し上げますよ、とグラシア様から」


侍従に持って来させた紙に名前を書いていく。グラシアも含めて18人の名前が書かれる。


「この中にグラシア様の懇意にされている方、またその方のお友達は何人くらいいらっしゃいますか?」

「お友達のお友達も含めれば王族派の家の方殆どでしょうから半分くらいかしら」

「ではその方達に事前にファティマ様に家格に合ったお付き合いの仕方を教える様に協力をお願いして頂けますか。一番最初の方が仲良くなれたら少し上の方がお茶会を催して一番の方をご招待し、一番の方のご紹介でファティマ様も参加出来る様にする、といった感じで」

「男爵家の方々で経験を積んで仲良くなれたら子爵や伯爵家の方々とお茶会と家格を上げていくのね」

「そうです。他の御令嬢達も経験が積めますし、派閥を超えて仲良くなれればグラシア様の実績にもなりますのでグラシア様にも少しは利があるのではないですか」


オフェリアの言葉にグラシアは頷く。

将来、王太子妃、更には王妃になるのであれば自分のクラスくらい掌握出来なくては話にならないはずだ。

頑張って下を教育していって欲しい。

そしてこちらに話を持ってくるのはこれきりにして欲しいものだ。


「オフェリア嬢は年下なのに本当によく頭が回るな。助かったよ」

「えぇ、本当に。来年になったら私のお茶会にご招待させてね」


最後にグラシア様に私たちはお友達、と念を押され、オフェリアは光栄ですと笑っておく。

まだお茶会に正式に参加出来る年齢じゃないのでとりあえず来年までは猶予が出来たが本当は全力で遠慮したいところだ。

ただ今のところ婚約者が殿下の側近なのだから仕方ない。

お茶会は散会となり、家まで送って行くというテルセロと一緒に侯爵家の馬車に乗る。

馬車が走り出すとテルセロはハァと安堵だか、呆れかよく分からない深い溜息を吐いた。


「本当はオフェリアを学園に入れようとしていたんだ、殿下は」

「は?どういうこと?」

「オフェリアをファティマ嬢と同じクラスに入れて面倒を見させようとしたってことさ」

「私、学年が違いますけど?」

「勉強も俺達に教えられるくらいなんだから問題ないだろうってさ」

「そんなメチャクチャな」

「だから急遽こんなお茶会をする事になったんだ。オフェリアがきっと別案を出すからちょっと待ってくれって」

「それはそれで他力本願が過ぎる!」


今度はオフェリアが溜息を吐く番だ。

しかしテルセロはまた怖い事を言う。


「これで殿下だけじゃなく、グラシア様にまでオフェリアが目をつけられてしまったのが悔やまれる」

「皆、側近の婚約者に過度な期待をしすぎじゃない?!」

「オフェリアが有能過ぎるんだろ」

「そもそも自分達の問題は自分達で解決して欲しいんですけど?!」


それからもちょくちょくテルセロを通して相談を受けたものの、ファティマの社交性育成計画は上手くいっているらしい。

やはりファティマは優秀な様で、一度ちゃんと教えれば何でも出来る様になるのが早いようだ。

その他にも魔法が苦手な殿下の側近であるソコロの為に秘策を与えたり、毒を仕込まれそうになったという殿下の為に身につけておけば何でも解毒してくれる魔道具を作ってあげたりと相談に乗りながら一年を過ごした。

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