第二話 負担
少し長いです。
よろしくお願いします。
仏頂面で中指を立てた少女。
「ブチ拔きます――!」
ミランのすす汚れたローブから指先ほどの小さなユニットが無数に出現した。
「ミドラの機能結合者!?」
見るや否や、統率を執っていた男が表情を歪めるが遅すぎる。
ユニットの一つ一つが小さく輝き、飛来する攻撃へと光線を放った。もれなく撃ち抜かれたそれらは爆発し、たちまち周囲は煙幕によって外界と隔絶される。
「クソッ……退避、退避ー!」
それも遅い。
敵がミランのユニットに気を取られたタイミングで隊長とベインは駆けている。
この最悪の視界の中、隊長は勘で、ベインはその特殊な眼で。二人は一方的に相手の位置を把握する。
やがて悲鳴すら聞こえることなく、視界が晴れる頃には敵部隊は全滅していた。
「ミラン、ユニットは」
二人が切り込んだあとは最低限の警戒のみで待機していた三人。うち、フォイがミランへと歩み寄った。
彼女が使ったのは結合機と呼ばれる人工的な特殊能力だ。
使い手は非常に少数な上、それぞれに適した性能を有する為、初見で攻略するのは非常に困難。
加えて、あまり誇れた話ではないが、ここミドラ皇帝国は生態実験が盛んな国。
機能結合者の数や完成度は周辺各国は遥かに凌ぐ。
ミランの場合はシンプルで、小さな飛行機器を無数に使役し砲撃するのが主な戦闘スタイル。しかし超多弾、高命中、連発可能と非の打ち所がない。
小隊規模の、それも偵察用の歩兵部隊では対応するのは不可能だろう。敵小隊は悲運だったな。
そんな彼女だが、砲撃の際に中指を立てるのがクセなのだ。前からやめるよう言っているのだが……残念ながら右から左。俺としては隊長の次に頭を抱える問題となっている。
「壊れてない?」
その上で、今フォイが心配しているのはミラン本人ではなく機器の方だった。と言うのも、ミランの技術は本物だが、故に機器の性能がギリギリだ。
連戦に次ぐ連戦で消耗し、既に何機か動作が怪しい。正直、ミランの実力ならばニ、三機でも充分応戦は可能だが、喜ばしい状況とは言えない。
あと整備班の反応が怖い。
なのでなるべく魔法を使いたくない(面倒で疲れるため)フォイは戦闘の度にミランを気に掛けていた。
「大丈夫です。あの程度の戦闘で片付くならまだ数時間はもちます」
そう言うミランはユニットの一つを差し出す。指先に乗った星形のそれは既に限界に見える。
「おうおう、もうお釈迦寸前じゃねぇかっ」
会話が聞こえていたのだろうか、戻ってきたベインは豪快に口角を吊り上げミランの肩を叩いた。
「ナイスだったぜ!」
「あの痛いです。打ち殺しますよ」
「ウハハッ!」
じゃれ合っている二人を尻目に俺は隊長へと歩み寄る。
俺達のように数字が振られている部隊は全部で六。零から十が存在する。
これらの部隊はナンバーズと総称されているのだが、いずれも少数精鋭の編成。
今のは小隊規模だったからいいものの、先程までの中隊以上の規模と再度ぶつかるには不安が勝る。
「隊長、敵の気は――」
――――ぷつッ!
「ちょっっっと!! いっつまで前線で無茶ってんのよこのバカ零っ! どうせまた武器ボロボロなんでしょ!? 敵の本体は後退したんだっつの! 何回言わせんだ早く戻って来いっ!!」
突如鼓膜が突き破られた。全員が同時に耳を抑える。
喋っているのは整備班のハロン オルオット。水色の髪をした童顔の女性整備士だ。
彼女がキレている理由はお察しの通り。
こうして第零部隊は今回も、一人もメンバーを失わずに戦線を離脱することができた。
これにて、ヘタリ込む隊長を引きずりつつも第零部隊――状況終了。
ありがとうございました。