1-1 記憶
即興で書いたので何も考えずに書いておりますよろしくお願いします。
「たす・・」
「・・けて」
「たすけて」
脳内にかすかに響く声、聞いたことのない声だということだけはすぐに分かった。
夢を見ている最中に、意識がはっきりすることがたまにある。
目を開けなければ、この声の主の顔を把握したい。
好奇心にもにた何かが青年の心を突き動かした。
薄目を開ける、かすかにぼやけてはいるが何か四角い箱のような場所にいて、その出口を塞ぐかのように鉄格子が付けられている。
ここは牢屋の中なのだろうか・・・耳に意識を向けると、金切り声が響いていた。
「だしてくれ!」
「たすけてくれ!」
「お腹がすいた!」
「うるせぇぞ黙ってろ!」
そのどれもが悲痛な叫びだった。
音がはっきり聞こえるようになったかと思うと、次は激臭に襲われた、牢屋の中、排泄物はすべてその場でしているのかもしれない、なぜかこの時は自分の置かれている状況を俯瞰して見れた。
今、凄く冷静だ。
自分の脳を整理する、自分は誰で、ここはどこで、俺はどうしてこんな場所にいる?
だめだ思い出せない。
今いる場所の確認しよう・・・ん!?
自分の鼻は顔の中で自分が鏡を通さず唯一見れる部位だ・・・その鼻が黒くくすんでいる、ああそうか埃まみれの場所に放り込まれでも・・・ん!?
肌が肌じゃない!?
その肌には、人間の肌に似つかわしくない、顔のパックをも拒むような大量の毛がびっしりと敷き詰められていた。
慌てて顔を触ろうとするも、手が動かない!?
正確には動くものの上下運動しかできない・・・
自分の身に異変が発生したことでようやく慌てることができるようになったのも束の間。
「この子なんてどうですか?」
鉄格子の向こう側からなにやら女性の声が聞こえてきた。
「わー可愛い柴犬!」
きょ、巨人!?
自分の目線よりも遥かに大きな女性の顔がのぞき込んでいる。
深淵を覗くとき深淵もこちら覗いているのだとはまさにこのことなのだろうか。
鉄格子を開け、手がこちらに向かい伸びてくる、俺はなすすべもなく、その手に引き寄せられ、撫でられた。
「あ、ちょっと!」
作業着に身を包んだ女性が、苦言を呈すかのように声を上げた。
「だめですよ勝手に開けちゃ、この子は前の飼い主に虐待を受けていて人への警戒心が人一倍強いんですから・・・あれ?おとなしい。」
俺はどうすればいいのかわからぬままただただ女性に抱きかかえられていた、鼻を突くような、だが嗅いだことのあるような・・・洗剤の臭いか、黒髪をすらっと伸ばし、見るものすべてを魅了するようなその美しい顔に俺は声を上げることも忘れ、ただその顔を見つめていた。
「この子にします。」
「あ、はい。」
女性の声は静かにそして美しかった。
その声に威圧されたかのように作業着の女性は一つ返事をした。
俺は籠に収められ、どこか別の部屋に連れていかれ、二人の女性はどうやら受け取りの手続きをしていたらしい、会話の内容で分かった。
外に出るとその建物には動物愛護センターと屋根の位置にデカデカと記されていた。
どうやらここは保護施設だったらしい。
そして俺は何故だがさっき彼女が言っていた通り、柴犬になってしまっていたのだ。
そんなことはつい知れずカゴに収められたまま俺は車の助手席に置かれるとその女性はロープのようなもので固定して、動物愛護センターを後にした。
「今日からよろしくね!えっと...柴犬だからシバでいいか!」
彼女は浮き足立つように命名してくれたのだが、名前の付け方があまりにも安易すぎやしませんかお嬢さん?それとも破壊と再生を司るヒンドゥー教の神様であらせられる、あのシヴァからの命名なのであればその名前は荷が重すぎるのでやめて頂きたいなどと考えているとどうやら次の目的地に着いたらしい。
この外観、そして看板に書いてある病院の二文字、ははん、さては動物病院だな?となるとやることは一つ、初めて病院に来たものがされることと言えば。
医者達が俺の身体を押さえつけてくる、別に逃げやしない、どうせ予防接種か何かだろう、じっとしていればすぐだ。
「おとなしいですねこの子。」
「さっき保護施設で貰ってきたばかりなんですよ。」
「そうなんですね。」
医者が俺の顔を見てくる、別に怖くないから早く注射をしてくれ、嚙んだりも暴れたりもしやしないから。
もしかしてこの獣医さん達は身動きをしないこの俺の威風堂々たる姿に逆に威圧されてるのか?喋る相手が居ないとどうも思考が増える。
射されるというのは何度されても慣れないものだが一度射されてしまえば、なんてことはない注射を終え俺は飼い主であろう女性の家へと連れていかれることになった。
もっと慌てさせて、医者の下りももっと広げられますね。
息抜きで書いていくつもりなのであまり細かいことはいいっこなしでお願いしますね。