第32話 瀕死のネズミ
しかしよく見ると、さまざまな破損や傷などがあった、アンテナや燃料を入れるためのドラム缶は無理矢理取り外され、履帯は長時間かけて溶かされた跡があり、切れて、中途半端に外されていた、車体や砲塔は煤汚れ、表面の塗装が剥がれたり、転輪を無理に外そうとして破損していたりと、走行すら出来ない有様であった。
「いやー、勇者様達がここに来て召喚していったんですけどね?使い方がわからないからってここに置いていったんですよ、勇者様達が言うには異世界のものとは言うんですがね、いくら触っても魔法が使われている様子もなく、」
いきなり語り出した学者を無視して、俺は
「こいつの上、登ってもいいか?」
「いいよ、梯子はそれね」
俺は梯子を使って車体の上に登り、ハッチを確認した
「中には入れていないのか?」
「あぁ、というかどれが入り口なのかわかっていなくてね、最初はみんな興味深々だったんだけどね、中が見れないと何もわからないと興味をなくしてしまってね」
中身は荒らされていないことに若干安堵したおれは
「逆に何が分かったんだ?」
「細い鉄の棒が杖ではない事と、この柄が森で身を隠すためのもの、これが何かの装置である事、移動が不可能な事ぐらいだね、あとはサッパリ、この数字の意味もわからないし上の方にくっつけてある2本の大小異なる筒がなぜあるのかもわからない、中を除いてみても途中で何かに遮られているし、、、、、」
「何故移動出来ないと?馬車のような車輪がいくつも付いているようですが?」
「学生だからしょうがないと思うけど、こいつは全身鉄で出来ている、重さは不明だが、こいつを動かすとなると大魔導師レベルの魔力が必要な事ぐらいはわかる、とてもじゃないが現実的じゃない」
「成る程」
「超大国にだって3人いるかどうかの人材だ、こんな鉄の塊動かすぐらいなら自由に暴れてもらったほうがまだいい、まぁ、こんなのが戦場に現れたら相手もクソビビるだろうが、そんなことに使うのは勿体なさすぎるしな」
「つまり、こいつは学者達にとってはいらないものだと?」
「まぁ、そうだな、だからと言って動かそうにも動かせないし、魔法で消し飛ばそうにも強力なものは使えない、どうしようもないことになってるんだよ」
「成る程、ではこのせ、いや、装置、貰ってもいいか?」
学者は不思議そうな目をしながら
「なぜ?何かあなたにとってメリットが?」
そういうと俺は
「メリットなんて無いさ、ただ、こいつに興味が湧いてね」
と、嘘をついた
「ふむ、面白い提案ですが断らせていただきます、一個人、しかも学生にこんな未知の塊を渡すわけにはいきません、例えそれが役に立たないものであっても」
「そうか、なら出入りを許可などは?警備もつけていい、これなら変なことをされる事も無いだろう?」
「そうですねぇ、まぁそれならいいでしょう、ただし2人の警備をつけますよ」
「問題ない」
「わかりました、ですが、貴方魔力を持っているので?」
「魔力、わからないかな」
「まぁあるとは思いますが、少なすぎると反応しないんですよね、この扉、どっかから魔石を手に入れてきてください、迷宮からでもいいので」
「簡単にいうねぇ」
「まぁ、これが出入りするための2つ目の条件とでも思ってください」
「ちょっと此方へ」
護衛から離れた位置まで連れてこられると学者は呪文を唱え、合言葉のようなものを言った
「今のは防音魔法、あんたの学年だとまだ習ってないと思うけど」
「今のが?」
「そ、魔石を手で掴んで扉の魔法陣が書いてある所に押しつけて言うの、分かった?」
「分かったよ」
「それで、さっきの杖を触らせて貰えるのはいつかな?」
「あぁ、完全に忘れていたよ、はいこれ」
俺が男にバレットM82を渡すと次の瞬間




