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吸血姫として現実世界を生き抜くために  作者: ふじごがつ
第一章 《吸血姫》 ユラ・ヴァン・アルギュロス・ロード 
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No.1-3 「ただいま異世界全裸なう」

 俺に『影化シャドウ』のスキルを与えたこの扉は【深淵アビスの扉】と呼ばれている。

 この扉は【禁忌】により生み出され、神や悪魔だろうと封印できる代物と、ユラが教えてくれた。

 なんでそんなものに封印されていたのか尋ねると、ユラは鬱憤を晴らすかのような勢いで話し始めた。


「なぜって、それはこっちが聞きたいのぅ。特に我がやらかしたことなどないはずじゃのに……いきなりじゃ…………いきなり【創造主クリエイター】我を封印してきたのじゃ!! あのいけ好かない感じ、我はめっちゃ嫌いじゃ!! 主人様もそう思わんか? あやつと話していると、調子が狂ってしまってどうしようもないのぅ」


 ユラは共感してほしそうにしていたが、その【創造主】ってのは見たこともないし、聞いたこともない。

【創造主】か、もしかしてこのゲームを作った製作者とか?

 それでその【創造主】ってのがラスボスか裏ボスって結構ありそうな設定だよな、このゲームの名前にクリエイトって入っているし。


「……主人様よ、まさかこの世界のことを何にも知らないのか!? 生まれたばかりだとしても、現実の方では何も説明を受けておらんのか!?」

「調べてもアザクラの情報は何にも出てなかったからな。そういうところも含めて始める前は楽しみだったんだけどなぁ。ま、こんなことをゲームのキャラなんかに言ってもわからないと思うけど」

「む~、主人様はまだこれをげーむという娯楽かと思っているのかのぅ。こんなに可憐な美少女吸血姫が、主人様にあ~んなことやこ~んなことをしてあげてるんじゃよ?」


 確かにゲームにしては音や感触がリアルだし、NPCの受け答えとかも滑らかだ、ゲームが現実に干渉するなんて空想だ。

 VRを超えるって謳い文句だけど、現実を超えられるわけはない。

 アザクラ内の演出と思い、気にも留めずに質問をつづけようとすると。


「主人様が気にしないのならそれでいいんじゃ。じゃが、このことは頭の片隅には置いておくようにするんじゃよ。あー、それはそうと主様は服を着ない趣味を持っているのか? 我と同じ体で美しいのじゃが、その恰好のまま外に出るのは、我が恥ずかしいのぅ。主人様の趣味を否定するわけではないのじゃが、外に出るときに裸のままはやめてほしいのぅ」


 ユラに言われて、自分の体を見下ろす。


「そうだ! まだ裸のままだった!!」


 この洞窟を探索するついでに服を探そうと思ってたんだ、思ってたんだけど……。

 いろいろ変なことが起こりすぎて忘れていた。

 まぁ人に出会わなかったから良かった。もし襲われたりでもしたらたまったもんじゃない。

 だけど、ここに来るまでに服なんて水晶に埋まっているのしか見なかったから、結局服を着ることはできないんだよな。

 少ない可能性を求めてでも、あの気持ち悪い生物がはびこっているもう一つの道には行きたくもないんだよ。


「ここら辺に生き物がおる場所なんてあったかのぅ。ちなみに主人様よ、新しいスキルに『裁縫』というスキルはなかったか?」

「そんなのなかったけどな。……『裁縫』ってことはそのスキルがあれば服とか作れるのか!!」


 おお、ついに希望が俺に舞い降りてきたんだ!

 この現代において生活するのに必須アイテムである服の調達という希望が。

 ふふん、と息を鳴らしてからユラが『裁縫』について教えてくれた。


「『裁縫』は糸や絹などを媒体として様々なものを作れるのじゃ! 主人様が着る服は、血液を媒体にしたらすぐに作ることができるのぅ」


 ふむふむ、糸と絹ってどこにあるの? それに血液を媒体って、また血液だよ!! 血液の使いからも分かんないし、『裁縫』を使えるようになるまでレベルを上げないとダメなの? 使えないことには意味がないんだよ!!

 もしかしてあれか? コウモリとかサソリを倒してレベルを上げたらいいのか?


「主人様よ、この洞窟でサソリを見たのか?」

「うん、ここに来るまでにもう一つ道があって、そっちはサソリとかがいて、地面も血の池みたいになってたから生理的に受け付けなくて、こっちに来たけど。サソリとか倒したら経験値ってもらえるの?」

「カカッカカカッ!!」


 おいおいどうしたんだよ急にそんなにテンション上げちゃってさ…………。

 さっきの話でそんなに笑うようなところってあったけ?


「主人様も運がいいのぅ。まさかあいつも同じ場所に封印されていたとは。サソリを倒したら経験値も貰えるんじゃが、その道の奥には、我の眷属が封印されておるはずじゃ。あやつなら我と主人様の力になってくれるじゃろう、であれば善は急げ、じゃろ?」

「だな、それじゃ服を着るために出発しますか!」


 ユラの眷属がどんな姿なのか気になるが、とりあえず服を着るためにサソリを倒して倒して倒しまくってレベルを上げるんだ!! 


「えいえいおー!」

「おーー! なのじゃ」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「『影化』のスキルを使わないと会えないけど、なんで会話はできてるの?」

「主人様よ、新しいスキルに『接続ジャミング』があったじゃろ。そのスキルが我と主人様を繋ぐ、いわゆる運命の赤い糸じゃ。まぁ我の本体には『影化』を使わんと会えんがのぅ」

「新しいスキルにそんなのなかったけど。ていうか今持っているスキルってどうやって見るんだ? ステータスオープン…………やっぱり表示されないよな」


 説明書には、これで自分のあらゆるステータスを確認することができるって書いてあったのに。

 あの説明書を読んだ意味がなさすぎる。後で運営に文句の一つでも言わないと気が済まないぞ。


「そもそもじゃが、この世界においてステータス欄なんぞ存在しない」

「そうなの?」


 自分の今のHP、状態異常、スキルの内容とか見れないの? そしたら不便すぎないか。


「この世界では心臓や首などの急所に攻撃が当たったら死ぬのじゃ。HPが0になれば終わりなど生易しいものではないのぅ。じゃがプレイヤーはメニューぐらい見れるはずじゃ、もしかすると、この場所が悪いかもしれん。地上に出た時にもう一度確認することをお勧めするのぅ」

「了解、ユラの言う通りにしてみるよ」

「もし、相手のステータスが見たいのなら『鑑定』のスキルを取得すればよい」


 おお、『鑑定』ってスキルもあるのか。

 これも異世界系なら定番だな。

 俺もスキルは奇抜で使いにくいものじゃなくてシンプルなのが良い、いちいち能力なんて覚えきれないから。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 歩きながらこの世界の常識や、ユラの持っている知識などを雑談交じりに話していると、ようやく分かれ道まで戻ってきた。

 あれ? なんか初めに来たときはごみ溜めのような匂いがして吐きそうだったんだけど、今は匂いが多少マシになっている。無味無臭とまでは言えないが気にするほどの匂いはしなかった。

 これは鼻が慣れたのか、本当に匂いがなくなったのか。あんな目に遭ったんだ、慣れたに決まっている


「ふむ、確かにこの先にいるのぅ。このサソリは我の眷属の一人、デゥアルのペットなんじゃ」


 こんなのをペットにしているやつが眷属か。

 最初はすべての吸血鬼を統べる王とやらの眷属ってことで期待していたけど、その王はこんなのだし、ペットにサソリを飼ってるんだろ。

 もう変な奴確定じゃん。


「主人様よ、主観だけで判断してはならんのぅ。デゥアルはいい子なんじゃから、虐めたら我が怒っちゃうからのぅ。カカッ!!」


 ははっ、笑えない冗談だ。

 俺に虐められるような奴が、ユラの眷属なんかになるはずがないだろう。

 しかし、ユラの時の経験があるから言える。

 これから先進むのならば、ある程度俺の体が壊れることを想定すべきだろう。

 ユラの眷属も俺に対してどんな印象を抱くか予想できない、俺とユラの外見についてユラは髪の色以外は全て同じと言っていたが、それだけで俺のことを襲わないとは断言できない。


 だが、今回はユラがいるのだ。

 デゥアルってのは、仮にもユラの眷属なんだ。ユラの姿だと何とかなるに違いない、頼りにしてるぞ。


「主人様に頼りにされるとは………うむ、デゥアルの説得は我に任せるのじゃ!」


 うん、頼りにしてるからね、本当に……。


「主人様よ、先に『血剣』を使っておけ、いざという時に使えんと無駄じゃからのぅ」


 確かに池の中に入るとスキルを使えるかどうか分からないな。

 もしモンスターに遭遇してもスキルを使う暇があるのかどうか。

 歩いているときにユラに教えてもらった通りに『血剣』を発動する。

 スキルを使うときは、そのスキル名を口に出すだけで良い。


「『血剣』」


 一つのスキルリングが発光し、手にいくつもの切り傷ができ、その切り傷から血が糸のように流れ出し、それらが巻き付いて木刀の形状へと変化した。


 どれぐらいの切れ味があるのか近くにあった赤い水晶に向けて振るうと、ぽきっとあっさり『血剣』が折れてしまった。

 柔らかすぎないか?

 いやこの水晶がとてつもなく硬かったのかもしれない……。

 仕方ないもう一本出しておくか。


「その必要はないのぅ。それにもう一本出すのは危険じゃのぅ」


 けど50㎝ぐらいあった『血剣』が20㎝ほどの無残な状態になったんだ。新しいのを作らないとダメな気がする。

 ちょっと水晶を叩いたぐらいで折れるような棒切れなんか何本作っても結果は同じだと思うんだけど。


「そもそもこの水晶は人が割れるような代物ではないからのぅ。それに『血剣』は、主人様自身の血液を消費して発動するスキルじゃ。そんなに頻繁に使っていると主人様の血液が足りなくなってしまうのじゃ」


『血剣』は血液を消費するんだっけ。

 さっきは特に目まいや立ちくらみとかは起きなったけど、池の中でそうなって溺れることだけは避けたいな。 

 ユラの言う通りに折れた剣のまま進むことに。


 デゥアルが封印されている道の奥に進もうとすると、その道から一匹のサソリが飛び出てきた。

『血剣』という名の棒切れで試しに叩いてみると、一撃で倒すことができた。

 なんだ、意外と役に立つじゃん。

 サソリが死ぬと、体の中身を辺りにぶちまけて死骸を残した。

 殺したはいいけど、特に何かがドロップするとかはなかった。


「その調子で殺していくと、う~~ん、大体あと20匹ぐらいで進化できそうじゃな」


 あと20匹か、多いかよくわからんけどサソリは襲ってこないから楽でいいな。

 デゥアルには服を着てから遭遇したい。そのため早めにレベルが上がることを祈って奥へと進んでいった。


 順調だった。

 血の水溜まりは生暖かくて気持ち悪かったけど、歩けないことはない。

 奥に進んでいくうちに、10匹以上のサソリは倒したし『血剣』も最初に水晶に当てて壊したところ以外は欠ける様子も見受けられない。

 途中、天上から現れたコウモリに驚いて尻もちをついたら、ぴちょっと生尻に触れた液体の感触によって吐きそうになったり、ユラに馬鹿にされたりもしたがそんなもの関係ない。

 出てくるサソリやコウモリを倒しながら進んでいると、チャットが表示された。


【指定レベルまで上昇しました

 役職スキル【闇を知るもの】

 スキル 『裁縫』『血の糸』を使用可能になりました】


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