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吸血姫として現実世界を生き抜くために  作者: らるにゃ
第一章 《吸血姫》 ユラ・ヴァン・アルギュロス・ロード 
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No.1-1 「ヴァンプ・ゲーム・スタート」

 期末試験を徹夜で突破し、本日サービス開始となるother(アザー) world(ワールド) create(クリエイト)をプレイするための準備を整える。


 全身タイツを着るのにコツがあるなんて知らなかった。

 何も知らない状態で着ようとしても、前後ろ逆でこんがらがったり、生地がすべすべだからスマホが触れなかったりして、手間取ってしまった。

 調べると、タイツの下には、何も着ない人や、普通のTシャツを着てる人がいたが、俺は下着だけを身に着けることにした。


 こんな格好、絶対に人に見せれない。


 早くなる鼓動を抑えつつ、ベッドに寝転んでイヤホン、サングラスを付ける。

 和也は夕方まで部活だから、時間になるまで自由気ままにプレイするか。

 説明書を見た感じ、ゲームのジャンルはMMORPG。

 それ以外の内容はざっくりとしか分からないが、雰囲気的に王道の魔王みたなボスを倒せばクリア、みたいな内容だと思う。説明書には操作方法とかチュートリアルの方法しか書いてなかったし。


 俺は壁に立てかけられている時計に目をやる。

 あと一分か――――もうすぐで始まるな。

 目を閉じて耳をすませる。

 頭の中に入ってくるのは時計の針が進む音。

 わくわくを抑えきれない心臓の鼓動。

 俺はこの瞬間が大好きだ。


 リラックスして時間が過ぎるのを待っていると、サングラス越しに自分の体が光り始めた。

 その光は次第に光量を上げて、辺り一帯を真っ白に染め上げた。

 数秒後に光が収まると、何もない、宇宙のような空間が広がっていた。

 脚が地面についている感じはあるが、地面に手を伸ばしてみても何かに触った感触がない。

 自分の顔を手で拭っても、サングラスに触れた感触もない。

 ここに居たら平衡感覚が狂いそうだ。

 キョロキョロと辺りを見回すと、突然目の前に選択肢が表示された。


【現実世界で生活しているあなたが、異世界で生活しているあなたになる

 世界変更型RPG、other(アザー)world(ワールド)create(クリエイト)へようこそ 最初に種族を選択してください】


【人類種】

【鬼人種】

【妖精種】

【獣人種】

【亜人種】


 説明書によると、選択できる種族は完全ランダムらしい。

 五つあるのは結構レアな方かも。

 でも、選択肢が多いとそれはそれで悩んじゃうんだよね。

 各種族について説明がなかったから名前で決めるしかないけど…………。


 よし、この中で一番謎な亜人にするか。

 人類種だったら人のままだし、鬼人種だったら角が生えるだけとかで、だいたいの姿は想像できるけど、亜人種だけはこれといったイメージが湧かなくて面白そうだし。


 亜人種をタップすると、何もない空間に一筋の光が差した。

 これからキャラメイクかな?

 説明書には身長や体重は現実と誤差程度しか変更を加えることができないが、選択した種族に応じて、髪の色や顔の形は自由に変えることができると書いてあった。

 亜人種の自分を考えながら待っていると、新しいチャットが表示された。


【異世界でのあなたが見つかりました。other world createの世界を楽しんでください】


 次の瞬間、その光に体が吸い込まれる。

 え? 待って、もしかしてこのまま行っちゃう感じっすか?

 もしかしてリアルの俺の姿のまま始めるとかないよね?

 信じてるからね運営。お願いだから……せめて……せめてカッコいいキャラであれ!!



 目を開けると、赤く輝く水晶がところかまわず生えている洞窟の中にいた。

 最初に目覚める場所は始まりの町みたいなのを想定していた。

 いかにもモンスターが出てきそうな洞窟に一人でスタートとはスパルタだな。


 ――――まあいいか。

 そんなことよりも自分の体の心配をしなければ。

 運営は一体どんな体を俺にくれたのか……はぁ!?


 自分の姿を見下ろすと、全裸なうえに、膨らみかけの胸、股にはぶら下がっていたあいつの姿がなく、手や足も全体的に小さくなっていた。

 急いで近くにあった水晶を鏡替わりにして確認すると、リアルの俺と真逆の姿をした女の子がそこに写っていた。


 腰まで伸びている銀色の長髪に、血のような真っ赤な瞳、チャームポイントにはでかすぎる八重歯、成長途中の胸。


「これってまさか――――女の子!? それに種族が吸血鬼!?」


 驚いてつい叫んでしまうと、口からは鉄のような匂いに、男子高校生が出すには幼すぎる声が洞窟内に響き渡った。



 こんなことはありえない……ありえないはずなんだ。

 キャラメイクは現実の姿を基本として設計するから、性別の変更や大幅な身長や体重の変更ができないはずなのに!!

 新しいタイプのゲームだから不具合が起きたと考えるしかないのか?

 体は問題なく動かせれるけど、問題なのはこのキャラが。


「めっっっっっっちゃかわいいってこと!!」


 舐め回すようにねっとりと自分の姿を見回す。

 透き通るような白い肌、宝石のように丸く真っ赤に輝く瞳、ぷっくりとした小さな唇、強く抱きしめると壊れてしまうほどの華奢な体、そして圧倒的な存在感を放つ腰まで伸びる銀色の髪。


「しっかしこれがVRを超えたリアリティか……」


 体を触ってみると、明らかに肌や髪の感触が現実と何ら変わりない(もちろん元の体よりも触り心地は良いが)、ほっぺをつねってみても痛みはなかった。



 ふぅ、おっぱいってさ、自分のだったら触ってもいい……よね?

 犯罪じゃないもんね。ぐへへ、手の疼きが止まんねぇ。


 興奮の色を隠せない吐息が洞窟内をこだまする。

 それが己の耳に入ろうとも、この場所には俺以外いないのだから羞恥心よりも好奇心が勝ってしまい、やめる気が起こるどころか、ますますやる気が増大していった。


 しかし、やる気があっても実行できないのが童貞のサガである。

 あと数センチのところで腕が止まってしまう。

 分かっているさ、手の疼きなんかじゃない、ただ女の子の裸を前に緊張で震えているだけなんだ!

 泣く泣く自分の弱さを認め、ため息を吐きながらごつごつとした地面に腰を落とす。


 本当ならゲームが始めると共に、スキルを決めたり、名前を決めたりできるはずなんだけど、どこでするんだろ。

 なんて、考えていると、


【名前を入力してください】


 目の前にチャットが表示された。

 名前か、いつも愛用してる名前でいいか。

『ヤナ』と声を出すと、次に選択肢が表示された。


【あなたの種族は吸血種/デミ・ヴァンプです。次のスキルの中から三つ選択してください】


【吸血・相手の血液を吸い取り、魔素に変換する】

【血剣・血液を消費して血の剣を生成する】

【眷属化・血液を与えることによって対象を眷属にすることができる】

【眷属召喚・眷属を召喚することができる】

【複製・血液を消費して対象を複製できる】


 もう女の子ってのは割り切るとして、スキルは慎重に選ばなければ。

 吸血種の定番と言ったら『吸血』とか『眷属』だけど、この血液ってのが何なのかよくわからない。自分の血液だってのは理解できるけど、血液を消費できる限界も知らないし、どうやって消費するかも知らない。


 んー、いくら考えても仕方ないか。

 ここまで来たのなら自分の直観を信じよう!

 とりあえず武器を持っていないから『血剣』。

 あとの二つは『眷属化』と『眷属召喚』。

『血剣』で倒して『眷属化』で眷属にすれば案外いけるかもしれない。

『眷属召喚』は、まぁ……『眷属化』とセットのようだし。


 選択肢の中からそれらをタップすると選択肢が消え、右手に金色のリングがリストバンドのように3つ現れた。


 説明書によると、このリングがスキルリングといって、このリングの色が表示されているときはスキルを発動することができ、クールタイムになると透明になり、再び色が戻るとそのスキルを使えるようになる。

 それでスキルの属性によってリングの色が違うらしいけど……金色ってなんだ?

 俺はてっきり血の色みたいな赤色が表示されると思ってたんだけど、金色ってことは……もしかしたら何か特別な力があるかも!


 ……こほん、ともかくこれでチュートリアルは終わったはずだ。

 説明書にスキルリングを受け取った後のことは書かれていなかったからな。

 これから自由に探索できるとはいえ、今はともかく、


「……服が欲しい」


 温度の影響は受けないから寒くはないんだけど、いかんせん全裸で洞窟を歩いたり、町に行ったり、人と会ったりする勇気はない。だってリアルの自分の体じゃないとはいえ、全裸なのは自分だもん。

 それに、こんな美少女が全裸で歩いていると、野蛮な男に襲われちゃう!


 まぁ服を手に入れるどころか、町に行けるかすらも怪しいけど。

 だって全裸でおっきな洞窟の中に一人だよ!? ポツンと一軒家じゃないんだから。


 周りには赤く光る水晶だけ、道もあるにはあるけど人の手が加わっていない足元がデコボコしてる道だし、極めつけは道の奥から聞こえてくるキューっていうモスキート音、絶対コウモリいるよ! 吸血鬼の住む場所だからってそこまで拘んなくても良いよ。


 結局ここでうじうじしてても始まらない。これはただのゲーム、これはただのゲーム、そう自分の心に言い聞かし、素肌に風を感じながら奥へ奥へと足を動かす。


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