元の体との再会 その8
東軍の魔法第二旅団を壊滅させた後、俺は西軍のシャーマナイトのところに戻った。
ああなってしまった以上、もう戻る事はないと思っていたのだがなあ。
事情が変わってしまったのだ。
「お、おい、首尾はどうなった!? イリーヴァたちが到着した時には既に敵は壊滅していたと聞いたが、まさか……」
「良い知らせと悪い知らせがある。まずは、良い知らせの方を聞いて安心して。そうすれば、悪い知らせの方も自然と分かるから」
焦るシャーマナイトに対して、俺は冷静に報告を始める。
何しろ、今から行う良い知らせを伝えるために戻ってきたのだからな。
いや、戻らざるを得なかったと言った方が正しいか。
「良い知らせとは何だ! 早く話せ!」
「話すより、実際に見てもらった方が早いと思う」
そう言って、オリッシュは一瞬ぐったりとなる。
そして……。
「兄上! もう会えないかと……わーん、怖かったよおー」
「!? まさか、オリッシュ……なのか?」
そのまさかのオリッシュである。
これが、俺がシャーマナイトのところにまで戻る事になった一番の理由だ。
東軍の魔法第二旅団を壊滅させた後、気が付いたらオリッシュのがこの体に入り込んでいた。
どういう理屈かは分からない。
まったく初めての体験だからな。
ただ、油断するとオリッシュに体の主導権を握られてしまう感覚とだけは説明できる。
だが、こうなってしまっては仕方がない。
そんな訳で、こうして兄妹の再開を叶えてやったわけだ。
勿論、それだけが目的ではないのだが。
「しかし、オリッシュ。どうやって、元に……?」
「分かんない。気がついたら元の体に戻ってて、こいつがここまで連れてきてくれた」
「こいつ……? ああ、成る程。それが悪い知らせなのだな」
相変わらず、理解が早くて助かる。
とりあえず、妹の無事な姿を見せてやったのだ。
もういいだろう。
「ご名答。私がこの体から抜け出せていなく、一種の同居状態。それが、悪い知らせ」
俺は、オリッシュから体の主導権を奪い、シャーマナイトに答える。
「それは分かったが、自分の元の体を取り戻すんじゃなかったのか? まさか……」
「その、まさか。私の体は死んでしまった」
「それは……気の毒だな」
「半分以上、貴方の妹のせいなんだけど。だから、気の毒だと思うなら手を貸して」
俺は、半ば恨み節でシャーマナイトにそう言った。
本来、オリッシュにされた事を思えば、もっと力づくでねじ伏せてもいいのだがな。
そこをお願いに止めているのは、これまでのシャーマナイトの行いに対する俺なりの敬意からである。
「手を貸せと言われても、私としては一日も早く妹の体を解放して欲しいのだがな」
「そう。だから、その為に手を貸して」
「……何をしろと?」
「そんなの、決まっているじゃない。作るんだよ、私が入る新たな体を!」




