元の体との再会 その5
突然の出来事であった。
今の魔法は……ヘルファイア。
いや、問題はそこではない。
目の前で俺の元の体が消滅した!
手の届きそうなところにまで来ていたのにだ。
あと少し……あと少しだったのにッ!
叫び声を上げる間もなく焼け死んだ元の体。
中に入っていたオリッシュがどうなったのかは分からない。
分かるのは、事実上の俺を殺したのは、弟子のカマストである事だけだ。
「ハァ……ハァ……殺ったぞ!」
「カマスト! 幾らなんでも殺すだなんて!!」
「これ以上……師匠の醜態を見ていられなかった。それに、モールライだって……」
「正直、我慢の限界だった。そうね、これ以上されたら私の方が師匠を……」
俺の体を殺した弟子たちが何やら話している。
殺すに値する行いだったかは、今となってはどうでもいい。
俺にとって大事だったのは元の体を取り戻す事だ。
そして、今は形はどうあれ俺を裏切った弟子たちへの怒りが湧くのみ。
おのれ!
何て事をしてくれたんだ!!
「師匠は……変わってしまった」
「以前は、あんなに素晴らしい方だったのに、どうして……」
「ああッ! だからと言って俺は何て事を……」
この、馬鹿弟子共が!
本当に変わってしまっていたんだよ。
中身がな!!
それに気付けないばかりか、最終的には気に食わないから殺すってか!
つくづく情けない奴らだ。
「だけど、殺してしまった悲しさよりも、今は悪夢から覚めたような気分だ」
「私も、これ以上師匠のあんな姿を見なくていいと思うと、何だか胸がスッとした感じ」
「もう、師匠が堕ちていく姿を見なくていい……のだよな?」
「うん……そうだよね……」
何が悪夢だ!
何が胸がスッとしただ!
俺にとっては、今さっき目の前で起きた事が悪夢だよ!
そして、さっきからのお前たちの言動に、怒りで胸がムカムカしているぞ!!
ふざけやがって……ふざけやがって!!
「これから、どうする……? 西軍と戦う準備はできている……が、しかし……」
「師匠の……団長のあの様子だと、生きていたところで戦場の指揮なんて無理だったと思う」
「そうだよなあ。このまま出撃しても問題なく戦える。だけど、ハイサムス魔法第一旅団長に、アメイガス魔法第二旅団長までもがいない、今の東軍じゃあ……」
「だったら、そうするしか……」
「ああ、俺も今、それを考えていた」
一体、どうするつもりだ?
「西軍に寝返りましょう」
「そうだな、今の状況なら兵たちも納得するだろう」
はああああ?!
この場に及んで、西軍側に寝返って難を逃れようだと!?
──させるかよ、そんなふざけた都合の良い決断。
「貴様ら、この場で全員殺してやる!」
「何者!?」
「まさか……鮮血の魔女?!」
もはや、隠れる必要も何もない。
堂々と真正面から皆殺しにしてやる!




