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地下室の秘密 その10

「強いて言えば、連れ戻したオリッシュの中身を早く元の体に戻せればと思ったのだがなあ」

「私も、その方法は早く知りたいけど、まずは連れ戻す事を成功させないと」


そうだ。

今は待つ段階なだけ。

アメイガスを西軍まで捕獲するという大仕事が、まだ残っている。


とは言え、やはり体の中身が入れ替わった理由が未だに分からないのが怖い。

けれど、分かっている手がかりと言えば、この一つだけ。

オリッシュの体、つまりは俺が今入っている体は魔法で作られた代用品だという事だ。


それ繋がりで言えば、本来ならばオリッシュにも魔法の才能があったはずというのもあるな。

シャーマナイトみたいな風魔法の使い手が、もう一人いたかもと思うと恐ろしい。

奇しくも、今の俺がそれに近い存在になってしまったが。


……ん?

いや、まさか。

そんな馬鹿な理由であってほしくない。


はっきり言って馬鹿げている。

魔法で作られた体よりも、修行で魔法の才能を開花させた俺の元の体の方が相性が良かった?!

そして、オリッシュに体を奪われた俺は、空いたこの体に収納されたとか冗談が過ぎるぞ。


ふと頭を過った憶測……いや、一種の妄想だ。

確証も何も無いし、違うと思う。

しかし、万が一にもこれが正解だった場合が恐ろしい。


俺は、このオリッシュの体でも魔法の才能を開花させている。

入れ替わった当初はアメイガスの体の方が相性が良かったオリッシュであるが……。

今は、この俺が入っている体の方が相性がいいに違いない。


つまりは、戦場で二人が再開した瞬間、元に戻るかも……ってわけだ。


元より想定していたケースの一つではある。

しかし、この不安を解消するためにも、一応シャーマナイトに話しておくか。


「あの……もし、戦いの最中にお互いが元の体に戻ったら、貴方どうする?」

「当然、それが分かり次第、私がオリッシュを連れ帰るが……」

「常にそれが可能とも限らない……よね?」

「そうだな。貴様は、その時はどうするつもりだ?」


俺は元の体にさえ戻れればいい。

そして、オリッシュを殺す理由も深くはない。


「オリッシュは人質として捕らえ、建前上の何かと引き換えに渡す。私を生かしてもらった恩は返すつもり」

「それを、私に信じろと?」

「あの日も、貴方が乱入さえしなければオリッシュは人質として捕らえる予定だったから。貴方の妹が抵抗さえしなければ大丈夫」

「……済まない」


シャーマナイトの奴、従順だな。

妹のためならば、貴族としてのプライドも捨てるという覚悟か?

ならば、俺もそれには敬意を払わないとな。


「気にしないで。私も貴方の協力には感謝しているんだから。貴方が私を助けてくれたみたいに、オリッシュは必ず私が助ける」


こうして、俺とシャーマナイトは互いの気持ちを整理してぶつけ合う事ができたと思う。

別に、狙ってやったわけではない。

しかし、最大の仕事の前にこれを行えた事は、二人にとっての幸運であったはず。


今は、そう信じたい。


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