決戦!ハイサムス その3
俺はキャンプを出て戦場へと向かう。
そして、オリッシュの体で出撃準備を行った。
速度アップの魔法エフェクトゲイル。
対ファイアボールの魔法アローガード。
そして、ウィンドカッターの魔法で己の防御と近接攻撃を対応する風の刃を生み出す。
さて、これからどうやってハイサムスがいる場所を攻めるかだ。
前回は陣形前衛の端を突破して後衛へと突き進んだわけだが。
……今回はどうしょうか?
そう思いながら、遠方から東軍が今どうなっているかを確認する。
すると、東軍の第一魔法旅団長ハイサムスが、前衛のど真ん中に堂々と出ているではないか。
……何をやっているだ、あいつは?
ハイサムスの周辺には精鋭と思われる魔法兵が十数人いるのみ。
それ以外の護衛は何処にもいない。
ここを狙ってくださいと言わんばかりに、敵のリーダーが丸裸の状態である。
──ここを狙った方がいいのか?
明らかに不自然で、逆に罠なのではないかと疑心暗鬼になってしまう。
他の兵たちは何処に行ったのか?
ハイサムスの左右を見ると、両翼に兵たちがそれぞれ固まって陣形を作っている。
これだけを見ると左右から囲んで攻めようとしている様だ。
ならば、何故真ん中を開けたのだ?
少し考えて、答えが出た。
ハイサムスの奴め、自分が囮になる事で、オリッシュ相手に殺される兵を少しでも減らそうというのか?
前回みたいに、奴の周辺を兵で固めて守るとウィンドカッターでまとめて殺されてしまう。
ならば、ハイサムスを無視して陣形の片翼を崩すべきだろうか?
いや、それをやれば真ん中にいる精鋭集団が一気に攻め入ってしまう。
しかも、今回の作戦通りに動いた場合、真ん中の担当者がいない。
俺の独断で作戦を変えるのは危険だな。
ここは、誘いに乗ってオリッシュでハイサムスを狙いに行くしかないか。
俺は、オリッシュの体で我先にと飛び出した。
そして、両翼の兵団には目もくれず、真ん中にいるハイサムスの方へと進む。
「ハイサムス、今日こそ貴様を倒す!」
そう言って、俺は奴の近くまで難なくたどり着いた。
目の前と言うには少し離れている。
奴のヘルファイアの魔法の射程に入らない程度の位置である。
「やはり来たか、オリッシュ!」
ハイサムスが構え、オリッシュをファイアボールの魔法で攻撃する。
しかし、当然ながらアローガードの魔法の効果で、飛んでくる火球は当たらない。
挨拶代わりか?
「前回同様一人でこの私に挑んだ事は誉めてやろう。だが、その事をすぐにでも後悔させてやる!」
ハイサムスがそう演説している間に、奴の周りの魔法兵がオリッシュを取り囲んだ。
成る程、そういう事か。
「フハハ、前回の様にちょこまかとは逃げられんぞ! 今日ここで、貴様を焼き尽くしてくれる!」




