決戦!ハイサムス その2
イリーヴァとサーフェスがその場を去った後、シャーマナイトが声を掛けてきた。
「分かっているとは思うが、ハイサムスを孤立させる前に東軍の連中を確認しろ」
「当然。可能性は極めて低いとは思うけど、万が一にも私の元の体があればそれを優先する」
この戦いに万が一にもアメイガスが参戦してきたら、作戦そのものを変更するレベルの大事だ。
だが、シャーマナイトは妹の中身が東軍の誰の体に入っているかまでは知らないからな。
そういう心配をするのも致し方ない。
「一対一のセッティングを作ってくれるだなんて、なかなか気が利いているじゃない」
「勝てるのだろうな?」
「当然。その為に、風の上級魔法を覚えたんだから」
「……大事な妹の体だ。万が一の時は私がハイサムスを倒す」
それなら、俺が手を下さずともシャーマナイトがハイサムスを倒せばいいじゃないか。
「だが、私が表立って攻めに出れば東軍の連中も本気で攻めてくるからな。できれば、それは避けたい」
「それって、どういう事?」
「西軍のオリッシュに対抗して東軍がルガウ・ソードを出撃させた事みたいに、私に対抗できる攻めの駒を東軍が出してくるという事だ」
成る程なあ……それも一理ある。
東オリーバ国が全軍を西オリーバ国との内戦に投入すれば、諸外国に対して無防備になるからな。
西軍が強い敵を出さない限り、温存している戦力はあると思う。
だがなあ……。
思うところがある俺は、シャーマナイトに一言言ってやる事にした。
「アメイガスの事は知っている?」
「何だ突然? 知っているに決まっているじゃないか。西軍は何度も奴に煮え湯を飲まされてきたのだからな」
「あの人が旅団長にまで出世したのは、そういった戦力の均衡を崩すため。西オリーバ国相手に攻め切れない東軍に痺れを切らした国王が、平民出身の兵士で優秀なのを取り上げたの」
まあ、俺の事なんだがな。
客観的とはいえ、自分の事をこんな風に言うのは少し恥ずかしい。
「……それで、私にどうしろと言うのだ?」
「別に。ただ、何時までも貴方が出撃しない事で戦いを後回しにはできない事くらいは、知っていてもいいんじゃない?」
「そうか。内戦の激化は避けられないのだな」
お互いに潰し合ってジリ貧になるのは困る。
でも、今みたいに停戦もせずに戦いを続けていると、兵よりも民が困るんだよなあ。
いっそ、きちんと終わらせてくれないと平穏に暮らせない。
「だが、それとこれとは別だ。内戦よりも妹を取り戻す事を何よりも優先する」
「当然。私もまずは自分の体を取り戻したい」
分かっているじゃないか。
そうと決まれば、何としても今日ハイサムスを倒さねばな。




