戦闘狂 その7
相手は魔法御三家、ルガウ・ソード。
腐っても魔法の名家か。
流石にそう簡単には勝たせてくれないな。
困った。
今使えるの風の基礎魔法だけでは、こいつに勝てないかもしれない。
やはり、風の上級魔法の会得が必要か。
例えこの場を乗り切れたとしてもだ。
今後、ハイサムスと再戦する事を考えるとなあ。
それを含めて何とかしなければ。
畜生!
火の魔法を使えば楽勝なのに。
今の立場がそれを許さない。
「どうした? 攻撃が止んでいるぞ」
「貴方だって、さっきから一発も当てていないじゃない」
「それがどうした!」
「闇雲に攻撃しても消耗するだけ」
そう、このままルガウの奴が一方的に攻撃し続ければ消耗するだけ。
しかも、至近距離でヘルファイアの魔法を使用し続ける反動ダメージも蓄積する。
このまま逃げ続けて、奴が動けなくなるのを待つのも手か……?
他に何か思い浮かばなければ、そうするしかないな。
それに、万が一にもルガウが標的をオリッシュ以外に変えても困る。
こいつに暴れられたら西軍への被害は計り知れない。
故に俺がこいつを引き付けておく必要もあるか。
「そうかい。だったら、攻撃せざるを得なくするまでだ」
ルガウは今までと攻撃パターンを変えた。
ファイアボールの魔法を連続して使用し、火球の群れをオリッシュに飛ばす。
だが、数で攻めようがアローガードの魔法の効果の前には無意味。
「なッ?!」
「どうしたの?」
「一発くらい当たってもいいだろ、畜生!」
アローガードの効果で、火球はオリッシュに命中する事はない。
それなりに魔法使い同士での戦闘を体験していれば想定内の事。
そんなに驚くような事でもないのだが。
近距離のヘルファイアなんて捨て身に近い戦法。
あれは、本来ならばファイアボールが当たらない敵に使うものである。
試してみる順序が逆なのだ。
ルガウの奴、経験の乏しさがモロに響いているな。
下手に血筋由来の才能がある故に、経験不足が顕著に現れている。
「当たれ! 当たれ! 当たれ! 当たれ! 糞がァー!!」
闇雲にファイアボールの魔法を連射するルガウ。
絶対に当たらない事を指摘してやろうか?
いや、このまま消耗させて持久戦に持ち込むのも悪くない。
やれやれ。
俺はオリッシュの体を避けていく火球を、涼しい顔で見ていた。
明後日の方向に飛んでいく火球。
だが、ルガウの奴があまりの数を飛ばすせいで、思わぬ事が起こる。
火球の一部が西軍と東軍が衝突している地点に飛んだのだ。
おいおい。
これじゃあ、東軍の連中も巻き込まれるだろ。
なんて奴だ。
しかし、俺としても西軍にまで被害が及ぶのは困る。
仕方ない、この攻撃を止めさせるか。




