戦闘狂 その6
ハイサムスの弟ルガウは、オリッシュに向かって駆け寄る。
そして、先程と同じように走りながら飛び掛かって来た。
だが、俺も先程と同じようにそれを避ける。
「燃えろ燃えろー!」
変わらず、ルガウはヘルファイアの魔法を素手で出す。
避けた俺は無傷だが……。
近距離で魔法を出したルガウ本人は、見ただけで熱そうである。
「ヒーハー! どんどん行くぜ!」
馬鹿の一つ覚えみたいな感じで、ルガウが同じ攻撃を繰り返す。
はっきり言って、当たれば怖いものの、効率が悪過ぎる攻撃だ。
しかし、これを一種の自傷行為として楽しんでいるのならば理にかなっているのかもしれない。
「ハッハ、逃げろ逃げろ!」
こいつ、自分に酔ってやがるな。
先程からの言動がとにかく痛々しい。
それだけ、まだ青いという事か。
それに、この程度の奴、フレイムウォールの魔法で炎攻撃全般を防御すれば楽勝である。
隙だらけで突っ込んできたところに一撃を与えるだけで沈むからな。
そういう馬鹿なところも含めてやはり青い。
だが、西軍のオリッシュの立場で火の魔法を使うのは避けたい。
使えるはずのない東軍の魔法が使える事がバレれば流石に怪しまれてしまう。
思い返せばハーモレイクを暗殺した時はバレなくて本当に良かった。
あの時は緊急事態で後先考えている場合ではなかったが……。
次も上手くいくとは限らない。
「どうした、手も足も出ないのか?」
安い挑発だが、このまま何もしないわけにもいかない……か。
「調子に乗らないで!」
俺は、オリッシュの体で逃げながらウィンドカッターの魔法で反撃した。
こちらを襲ってくるルガウ相手に風の刃を複数撃ち出す。
「はッ! こんなもので俺を倒せると思ったのか?」
ルガウは、己に向かってくる風の刃を指差す。
そして、そこからファイアボールの魔法で火球を撃つ。
火球と風の刃は空中でぶつかり合い、相殺された。
期待こそしていなかったが、やはり防がれたか。
「へへッ! 楽勝楽勝!」
確かに、指差しさ先から火球を撃ち出す事で狙いをつけやすいのだろう。
それに、見た目だけならば格好良く決まっている。
しかし俺が怖いのは、奴がそれを涼しい顔でやってしまう事だ。
そんな事をやれば指先が絶対に熱い。
真似はできても絶対にやりたくないな。
「オラオラ、どうした? こっちから行くぞ!」
こちらの攻撃を物ともせず、ルガウはヘルファイアの魔法で攻撃してくる。
俺も慌てて回避動作を行い、これを避ける。
今のところ互いに攻撃こそ当たらないが……。
相手の動きが派手で豪快ながら、一発も当てる事ができないのが何とも歯痒いな。
おのれ……。
風の魔法に慣れていない経験の差が、ここに出たか。




