戦闘狂 その4
危なかった。
もう少し判断が遅ければ間違いなく今ので……。
おのれ!
こいつに近づくのはまずい。
近づかれるのもまずい。
畜生!
何とかしなければ。
しかし、こいつ只者ではないな。
「あなた、何者?」
「おっと、紹介がまだだったな。俺の名はルガウ・ソード。ハイサムスの弟と言えば分かるかな?」
ハイサムス……あいつ、弟なんかいたのか。
「そうだ、礼を言わなきゃいけないんだったな」
「礼……?」
「オリッシュ・ジュエル。お前のおかげで出られた上に戦線復帰できたんだぜ。ありがとな」
意味が分からん。
オリッシュというか俺は何もしていないしなあ。
まさか、アメイガスの体の中にいる元のオリッシュが何かやったのか!?
「どういう事? あなたにお礼を言われる事なんてやっていないと思うけど」
「それが、あるんだな」
「はあ?」
「まあ、お前には分からないか」
おのれ!
気になるじゃないか。
事と次第によっては俺の今後にも関わる。
とりあえず、聞くだけ聞いてみて……答えなかったら力づくで聞くか。
「気になるじゃない。教えてよ」
「ああいいぜ、教えてやる」
「それで、どういう事?」
「お前が戦場で派手に暴れてくれたおかげで、兄貴が俺を解放する気になったんだ」
兄貴というのはハイサムスの事。
そして、解放というのは今まで何処かに閉じ込められていたのか?
出られたとも言っていたから、多分そうであろう。
第一と第二で組織間の距離があっても、こんな奴がいるなら噂くらい耳に入る。
それが、どういうわけか今まで噂すら聞かなかったという事はだ。
ハイサムスが何らかの理由で温存していたのだろう。
そして、西軍でのオリッシュの働きを見て東軍のハイサムスが決心したと。
成る程、だからハイサムスが暫く前線を離れていたのだな。
こいつを解放するために。
「兄貴の奴、お前の戦い方には品性の欠片もない。もっと貴族らしく態度を改めろ。とか言いやがるんだ」
「そうなんだ」
「酷いよな、そんな理由で俺を館に軟禁状態にするんだぜ。俺が戦場に出れば、こんな内戦簡単に終わらせるって言っているのによ」
確かにそいつは酷いな。
自由というものがないのか。
貴族も大変そうだ。
だが、ハイサムスがこいつを解放したという事は、それだけ必至である証拠。
オリッシュに対抗するには、こいつに頼る他ないという判断なのだろう。
成る程、強いのは当然だな。
「それで、私を倒すために解放されたの?」
「いいや、違うな。確かに、お前を倒すのも仕事の一つだが、少し違う」
「? どういう事?」
「ジュエル家がお前みたいなのを出すなら、こちらも遠慮する事は無いという事だ」




