戦闘狂 その1
ハイサムスを撃退してから二週間は経過しただろうか。
あれを機に、西軍は領土を挽回して前線を押し戻し続けている。
勿論、俺が先陣を切って次々と攻めているのが大きい。
だが、それだけではない。
自信をつけた西軍の士気が高くなった事。
そして、イリーヴァとサーフェスのコンビが上手くやっている事。
これらが結果に結びついているのだ。
この目に見えた成果に、魔法師団長のシャーマナイトも驚いていた。
いや驚くというよりは、今日まで続いている唐突な快進撃に気持ちが追いつかない様子だ。
だが、出した結果には応えなければならない。
そう思ったのか、シャーマナイトはキャンプに出向いて二人を褒めた。
功労者たちを労おうと奴も頑張っているのだろう。
「サーフェスにイリーヴァよ、驚くばかりの目まぐるしい活躍だ。とにかく、よくやってくれた」
「いえ、当然の務めを果たしているだけです、シャーマナイト様」
「前任者であるハーモレイク・ミラーの失敗を返上する機会を頂き、感謝しています」
「そうであったな、イリーヴァ・ミラー。此度の数々の活躍で、ミラー家もきっと報われるであろう」
「そう仰って頂けるならば幸いです」
話し合った甲斐があってか、イリーヴァも素直に活躍を喜べるようになった。
迷いが消えたおかげか、今まで事故る事もなく極めて順調である。
「君たちのおかげで、東軍のアメイガスに奪われた領土を徐々に取り戻しつつある。この調子で引き続き行きたい」
「はい!」
「この結果は、オリッシュが道を切り開いてくれたおかげでもあります。シャーマナイト様、オリッシュにも是非労いの言葉を」
「そ、そうだな、イリーヴァ。その、何だ。皆の前で妹を褒めるのは……照れくさくてな……」
照れくさいねえ……。
妹に対して過保護なお兄様がよく言うわ。
いや、だからこそなのか?
まあいい。
シャーマナイトがあの調子だから、水を差さない程度に俺が代わりに釘を刺すか。
「いえ、これくらいの働きは当然です、お兄様……いえ、シャーマナイト師団長。敵のリーダー格であるハイサムスやアメイガスと対峙した時こそ、もっと活躍した姿を見せられると思います」
「そ、そうか。オリッシュも大勢相手に毎回一人で戦っていて心配なのだが、物足りないのか……」
そう思ってくれてもいいんだが……。
問題はそこじゃないんだよ、シャーマナイト。
しかしながら、そこにサーフェスが喰いついてくれた。
「しかし、敵のリーダー格が出てこないのは不思議です。東軍も弱っているのでしょうか?」
「サーフェス様の心配も分かります。そろそろ、東軍も巻き返すために新たなリーダー格を投入するかもしれません」
流石はイリーヴァ。
俺が誘導した通りに動いてくれるいい子だ。
そう、俺が言いたいのは、こうだ。
楽に勝てているのは東軍が何故がリーダー格を温存しているという事。
そして、リーダー格が来れば危ういという事である。




