恋する分家の令嬢 その7
シャーマナイトに呼び出されたイリーヴァとサーフェスは、先の質問に答えた。
「是非とも攻めましょう。でないと我々が駆けつけた意味がありません」
「サーフェス様が率いる戦士旅団が出撃するのでしたら……」
やはり俺の予想通り、サーフェスとイリーヴァは進攻する事に同意したか。
さて、ここまでは上手く行った。
そして次の問題は、どういった形で攻めるかだ。
とりあえずは、俺が……アメイガスが制圧した場所を西軍の手に戻すか。
アメイガスが落としてオリッシュが取り返す。
俺が落として俺が取り返す。
──くだらん。
俺はただ、元の体に戻るために行動するのみ。
最悪、周りがどうなろうが俺が無事でなきゃ話にならないからな。
元の体に戻れない限りは、東軍に義理立てする理由もない。
──こうして、思いを巡らしていたところである。
サーフェスの奴が不意に話しかけてきた。
「なあ、オリッシュ。昨日みたいに一人で飛び出さないでくれよ。何か作戦があるなら、一言言ってくれてもいいじゃないか」
よく言うぜ。
お前が一番足を引っ張っていたじゃないか。
あの時、イリーヴァに助けてもらってなかったら、確実に犬死にしていたというのに。
……いや、これもオリッシュの身を心配しての事だったな。
だとしても、自分の手に余る事をすべきでは無いだろうに。
今後の事も含めて、まずは釘を刺しておくか。
「お言葉ですが、作戦を伝える間もない敵襲だったじゃないですか。それに、足手まといにしかならないのに、何故あの場所に来たのですか!?」
「そ、それは、昨日も言ったけどオリッシュの事が心配だったから……」
「だったら、逆に心配かける様な事はしないでください」
「何だと! 人が折角心配して助けようとしたのに、お礼の一つくらい言えないのか!!」
「サーフェス様。そう思うのであれば、あの時助けてくれたイリーヴァに感謝して、ちゃんとお礼の言葉の一つくらい、かけてあげてください」
全く、こいつは自分がオリッシュの前でいい格好したいだけなんだよ。
そういう下心が先に出て、周りが見えていないのが欠点だ。
第三者の俺から見れば笑止千万。
「あの時は、オリッシュだって危うくイリーヴァの攻撃の巻き添えになって危ないところだったじゃないか。なのに、なのに何故イリーヴァに礼を言わなければいけないんだ?!」
「あれは、サーフェス様を助けるためにイリーヴァが仕方なくやった事です。それを危なかったと申すならば、私はサーフェス様に危うく殺されかけた事になりますが?」
「うっ……」
呆れた奴だ。
自分が危なかった事にも気づいていなかったのか。
だがまあ、これでサーフェスも少しは懲りただろう。
イリーヴァに対してもちゃんと礼を言ってやって欲しいのだが。
上手く行ってくれるといいな。




