恋する分家の令嬢 その2
幾ら女の体とはいえ、男と恋愛関係になるのは嫌。
恋する女の嫉妬による煽りを受けるのも嫌。
まあ、そうなりゃ答えは一つか。
何としてもイリーヴァとサーフェスをくっ付ける。
そうすりゃ俺がサーフェスに言い寄られる事も無くなる。
そして、イリーヴァも幸せになって万々歳だ。
……何で、俺がこんな事をしなきゃいけないんだ?
だが、降りかかる火の粉は払わねばなるまい。
どの道、今の段階で西軍が仲間割れなんて事になっても困る。
これも、元の体に戻る計画の一つと思う事にするか。
急がば回れってやつだな。
そうと決まれば早速。
と、行きたいところだが具体的な方法が思い浮かばない。
他人の色恋の世話なんてした事ないからなあ。
サーフェスに限っては最悪ぶん殴ってでも振ってやればいいとして。
問題はイリーヴァの方だ。
くっ付けるにしても、サーフェスがあの調子じゃなあ。
イリーヴァがサーフェス本人に対して積極的になるようにする。
サーフェスがイリーヴァを見るようにする。
この二つを何とかしなければ。
やりたくはないが、やはり二人と会話するのが一番か。
そうすれば、何かしら活路が見えてくるかもしれない。
話を聞くとすれば、まずは……イリーヴァ……か。
俺は砦内を歩き回り、イリーヴァを見つけた。
彼女は砦の屋上で一人夜風に黄昏ている。
「イリーヴァ……隣、いいかな?」
オリッシュは多少強引にイリーヴァの隣に立つ。
「何? 何か用でもあるの?」
イリーヴァは不機嫌そうに答える。
勿論、一人の時間を邪魔されたせいもあるだろう。
しかし、本当にそれだけだろうか?
「どうして、そんなに不満そうなの? さっきだって褒められていたじゃない」
「……別に。褒められたくてやったわけじゃないし」
「サーフェス様の事、助けたかったからでしょ?」
オリッシュのその言葉に、イリーヴァは少し驚いた表情を見せる。
「そ、そんな事ないから。あの時は東軍をやっつけるのに必死だっただけで」
こやつめ。
照れているのか、素直に認めようとはしないな。
ならば、押してみるか。
「本当に?」
「な、何? あの時、敵と一緒に攻撃しちゃった事怒ってるの?」
「あそこでイリーヴァが魔法を使うのに躊躇していたら、サーフェス様は敵にやられて間に合わなかったし、仕方ないと思うけど」
「え……えっ!?」
「イリーヴァ、頑張ったと思うよ」
オリッシュのその言葉に、イリーヴァは顔を真っ赤にする。
しかし、それから直ぐに今度は顔を曇らし始めた。
「何……私が活躍するのがそんなに嬉しいの?」
「……嬉しくないの?」
「嬉しいわけないでしょ! これじゃあ私、本家を継がなきゃいけなくなっちゃう!!」
本家……?
よく分からないが、これがイリーヴァの今の悩みみたいだな。




