援軍 その10
誰だ、こんな時に!?
邪魔だからこっちに来るな!
助けるつもりでやって来たのは、西軍戦士第一旅団長のサーフェスだった。
他の兵を部下たちに任せ、馬に乗ってここまで突き抜けてきたのだろう。
だが、魔法兵による加護無しで戦士が魔法使いとまともに戦えるはずがない。
「ギャアアアァァァーーー!!」
近くにいた魔法兵が使ったヘルファイアの魔法がサーフェスに襲い掛かる。
サーフェスは地獄の業火で焼き尽くされた。
……と思われたが、奇跡的に生きていた。
乗っていた馬のみが犠牲となり、サーフェスは振り落され助かっている。
運のいい奴だが、次は無いだろう。
このまま放置すれば死ぬだろうが、見殺しにすると後が面倒そうだ。
──仕方ない、助けるか。
オリッシュはサーフェスにエフェクトゲイルとアローガードの魔法をかける。
「逃げなさい! 今なら逃げ切れるから、早く!」
「ここで逃げたら恥だ! それに、まだやれる!」
アホか!!
さっきので実力差くらい分かれよ!
こっちは、ハイサムスの相手で忙しいんだ。
これ以上馬鹿を気に掛ける余裕はない。
気を抜くと、こっちが殺される。
だが、その時であった。
「サーフェス様! 今、助けます!」
西軍魔法第一旅団長のイリーヴァの声と共に、大量の水がこちらに押し寄せて来る。
押し寄せる水は、おそらくは水の上級魔法で出現させたものだろう。
そして、水と共に板に乗ったイリーヴァが現れて素早くサーフェスを救出する。
やれやれ、奴も命拾いしたな。
だが、押し寄せる水はハイサムスを含めた東軍の後衛連中を。
更には、オリッシュをも飲み込んで進もうとしている。
このままじゃあ、俺がヤバい。
どうする!?
走って逃げても追いつかれる。
かと言って、イリーヴァの様に板を使って水の上に乗るなんて芸当はできない。
畜生!
空でも飛べなきゃ無理だ!
ん……飛ぶ?
そうだ。
エフェクトゲイルの魔法を応用して空を飛ぶやつ。
あれを成功させれば助かる。
怖がっている時間は無い。
ぶっつけ本番だが、このまま流されるよりかはマシだろ多分。
俺はオリッシュの体に風の魔法を集中させる。
そして、間一髪のところでオリッシュの体は勢いよく空中に放り出さた。
何とか、助かった……の……か?
オリッシュの体が空高くにある状態で、ハイサムスが流されて行くのが見えた。
火の魔法の補助が水の魔法にかき消されたのか、逃げきれなかったのだろうな。
ハイサムスとの勝負はお預けだが、とりあえず今の戦には勝てたみたいだ。
──で?
俺はどうなる?
空中で制御できないオリッシュの体は、落ちるだけだぞ。
何とか落下の衝撃を抑えないと死ぬ!
そうして、空から落ちるオリッシュの体を、下で待ち構えたサーフェスが受け止めた。
「もう大丈夫だ、オリッシュ」
俺は、オリッシュの体でサーフェスを思いっきり引っ叩いた。




