援軍 その4
声がした方向を見ると戦士の集団がいる。
援軍の戦士旅団も到着したのか。
「あっ、サーフェス様!」
戦士の中で一番格上かと思われる男に対し、イリーヴァは反応した。
こいつか戦士旅団の団長っぽいが……?
「やあ、久しぶり。イリーヴァ、そしてオリッシュ」
さっき、会話に割って入ってきたのはこいつだな。
そして、こいつもオリッシュの事を知っているというのか。
しかもイリーヴァの反応からして、貴族なのかこいつも。
畜生め!
今日来る貴族二人について、シャーマナイトからもっと聞いておくべきだった。
「はっ、はい……サーフェス様……お元気そうで何よりです!」
サーフェスという貴族の男に対し、イリーヴァは恥ずかしそうに答えていた。
さっきまでの態度とはまるで別人である。
相手の男に畏まっているというよりは、むしろ好意を寄せている感じでの従順な態度だ。
まあ、一言で言ってしまえば、メスの顔ってやつだな。
しかしまあ、それだけこのサーフェスとかいう貴族がいい男という証拠。
見た目も短髪で細身ながらに程よく筋肉がついた美男子である。
丁度、オリッシュの兄シャーマナイトが長髪で知的なイケメンであるのと対照的だ。
俺も、オリッシュの体になってしまった影響で、サーフェスに若干ときめきそうである。
はっきり言って、激しく気分が悪い。
一刻も早く元の体に戻りたいと切に思った。
「ところで、オリッシュ。シャーマナイト魔法師団長に会いたいんだけど」
サーフェスがいきなり話しかけてきた。
「それなら、部屋にいると」
「案内してくれないかな?」
ちっ、面倒だな。
こっちは今すぐにでも離れたいのに。
イリーヴァの方を見ると、凄い形相でオリッシュを睨んでいる。
よく見りゃ美人なのに、これでは台無しだ。
そんなに俺が……いや、オリッシュがサーフェスと話しているのが気に障るのか?
……仕方ねえなあ。
「分かりました。イリーヴァ、貴女も来ますよね? 二人で仲良く後ろから付いてきてください」
「えっ!? そ、そうね」
イリーヴァがきょとんとした顔をしている。
予想外の事だったのだろうか?
まあいい、さっさと済ませてしまおう。
オリッシュが先頭になり、その後ろをサーフェスが歩く。
そして、少し離れて後ろからイリーヴァが付いてきている。
だが、程なくしてサーフェスがオリッシュの隣に寄って話しかけてきた。
「ねえ、オリッシュ。初めての戦場はどうだったかい?」
ええい、うっとおしい。
気色悪いわ!
その上、後ろの方にいるイリーヴァの顔が……今度は曇っている。
「あの、サーフェス様? 後ろにいるレディをエスコートしてあげてほしいのですが」
「いや、僕は今オリッシュと話がしたいんだけど……?」
「不安がっているレディを放っておくなんて男らしくありません。私、そういう人は嫌いです」
「わ、分かったって」
サーフェスは慌ててオリッシュから離れた。
やれやれ、先が思いやられる。




