援軍 その3
横槍を入れてきた第三者のせいで、周りの兵たちがまた騒ぎ出す。
誰だ?
折角、事が上手く運びそうだったのに。
「まあ、オリッシュったら。こんな汚れたローブなんか着て、恥ずかしくないのかしら?」
まただ……何だこいつは?
いきなり突っかかってきやがった。
声の主を探すが、周りの兵が邪魔だ。
どうやら、こちらに向かって来ているみたいではあるが……。
しかし、俺は顔や姿をよく見ず反射的に答えてしまった。
「誰ですか!?」
オリッシュが言ったその言葉に、向こうも答える。
「まさか、わたくしの事を忘れたとは言わせませんよ? オリッシュ」
いや、マジで誰だよ?
忘れたとか以前に知らねーよ。
だが、近づいてきた女の姿を確認して、それを後悔した。
周りの一般兵と比べて明らかに豪華な装備。
こいつが、シャーマナイトが言っていた貴族か畜生!
「久しぶりですね、オリッシュ」
おいおい、どうすんだよ。
向こうは思いっきりオリッシュの事を知っているじゃねーか。
しかも、その口ぶりからして随分と親しそうじゃねーかよ、おい!
本当は忘れたフリをしたいが、シャーマナイトに言われたからな。
できれば、それは避けたいが……。
俺はあいつの名前すら知らないぞ。
仕方ない。
何とか適当に話すしかないか。
「ええ、久しぶり」
「何? そのそっけない返し。さっき、周りに振りまいてた威勢はどうしたの?」
だーーーっ!
何様だよ、こいつ……って、御貴族様か。
だけど、今は一応こっちだって貴族なんだぞ。
いかん、キレては駄目だ。
今日にもまた東軍が攻めてくる。
こんなところで争っている場合ではない。
──とりあえず、会話を続けなければ。
「……それで、今日は何をしに?」
「何をって、聞いてないのかしら? 私が新しい魔法第一旅団長に就任したって事」
成る程、そういう事か。
つまり、こいつがイリーヴァ・ミラー。
さっきシャーマナイトが言っていたハーモレイクの後任だな。
「そうだったの。就任おめでとう、イリーヴァ旅団長」
「ふんッ! 何がおめでとうなの? 嫌味?」
さっきから嫌味ったらしいのはお前だろうが!
……いや、貴族同士のやりとりというのは、こういうものなのかもな。
常日頃からこんな風に言葉で力比べをやっているのか。
ならば、確かに記憶喪失だと相手に弱みを握られるのはまずいな。
「で、さっきも聞いたけど、何でこんなローブを着ているの?」
早速か。
ならば、こちらも言い返さないとな。
「ふーん。イリーヴァは実戦経験無いみたいだし、血染めは刺激強過ぎちゃったか」
「何ですって!!」
ははッ!
効いてる効いてる。
だが、その時オリッシュとイリーヴァの会話に割って入って来た男がいた。
「二人共、喧嘩はそのくらいにするんだ。今日は、こんな事をしに来たのでは無いだろう?」
──今度は誰だ?




