風の魔法 その10
メイドのレゾナの道案内で武器庫まで到着した。
「あの。これ、シャーマナイト魔法師団長からの紹介状で」
「シャーマナイト様が……?」
俺は紹介状を見張りに渡す。
見張りはメイドを連れた女魔法兵相手に怪訝そうな顔を見せる。
そして、紹介状を受け取り中身を読むものの、それは変わらなかった。
「事情は分かりました。どうぞ」
素直に武器庫の中に入れてくれたが、見張りは明らかに呆れている。
まあ、それも仕方ないし、当然か。
アホな貴族が戦場で無理言っている感じにしか見えないからな。
だが、俺が生き残るために利用できるものは利用させてもらう。
武器庫の中には、様々な武器や防具の基本装備が揃っていた。
魔法兵のものだけではない。
剣、槍、弓矢を始め、物理攻撃を扱う兵士たちの武器も揃っている。
「さてと、どうしようかな?」
「あの、オリッシュ様? 杖ではないのですか?」
杖か、それもまあいいだろう。
しかし、できる事なら使う魔法をイメージできる武器の方がいい。
その方が魔法も制御し易いからだ。
火の魔法なら簡単だ。
燃える真紅の炎をイメージする赤い宝石を装飾したロッドがいい。
だが、風の魔法はどうだろうか?
個人的に風で斬り刻むイメージが杖と噛み合わない。
シャーマナイトが以前に見せた雷を出す魔法なら杖でもいいのだけどな。
「うーん。今の私はウィンドカッターを主体で戦いたいから、杖よりも何か斬る武器の方がいいと思って」
「斬る武器……ですか。でも、剣は重たいですし」
そうだ。
斬ると言えば剣が思い浮かぶが、長剣は確かに重い。
元の体ならまだしも、オリッシュの鍛えていない女の体じゃ無理そうだ。
短剣、ナイフくらいの大きさなら軽い。
斬り刻むイメージにも合うが、俺は杖でも長くて大きいのが好きなんだよなあ。
何か、もう少しいい武器が無いだろうか?
「斧や鎌なんかもあるのですか。ですが、高貴なオリッシュ様には似合いませんね」
確かに、それらの元は生活用品だからな。
御貴族様には似合わないってか。
しかし、鎌……か。
これも斬る武器で、しかも風のイメージにぴったりだが、うーん。
「こ、これは!?」
「何か見つかったのですか、オリッシュ様?」
俺が見つけたのは戦闘用に改造された鎌、バトルサイズだ。
刃が湾曲している普通の鎌とは違い、真っ直ぐな刃をしているのが特徴。
おまけに、長杖と同じくらいに柄が長くて丁度いい。
これだ!
と、俺は思った。
「このバトルサイズを杖の代わりとしましょう」
オリッシュの体で、俺はバトルサイズを手に取る。
うん、元が鎌だけあって見た目よりも軽くて扱いやすい。
これならいけそうだ。
後は、実戦で試してみるしか無いな。
※バトルサイズは、鎌の武器でイメージされやすいデスサイズとは違い、三日月形になっていない武器です。薙刀をイメージして頂くと分かり易いかと思います。




