敵軍と最弱女魔法使いと体が入れ替わる!? その2
気を失ったのは一瞬の事だ。
俺はすぐに目を覚ます。
しかし、詳細こそ分からないが明らかな違和感を感じる。
どうした事だ?
目の前に同行していた弟子二人に支えられている俺の姿が見える。
今の一瞬で何が起こったというのだ!?
「大丈夫ですか、アメイガス様!?」
俺は「ああ、大丈夫だ」と咄嗟に喋ろうとした。
しかし、明らかに出た声が俺のものではない。
若い女の声だ。
訳が分からなかった。
声がおかしい。
体の感覚もおかしい。
立ち上がろうとしたが力が思う様に入らない。
「貴様! アメイガス様に何をした!?」
同行していた一番弟子の部下が、攻撃しようと俺に向かって構える。
いや、俺の体は目の前にあるから、俺に向けているつもりではないのかもしれない。
だが、このまま奴の攻撃を受けると俺は殺られてしまう。
避けなければならない。
しかし、体が思う様に動かず確実性に欠ける。
ならば魔法で防御するか!?
幸い、魔法は普通に使えそうだ。
「オリッシュ! 今助ける!」
俺が咄嗟に構えて攻撃を防ごうとした、その時だった。
天から謎の声が聞こえたと思ったら、突然雷が部下たちに目掛けて落ちてくる。
その攻撃に、俺の部下たちが俺の体を連れて後退していく。
「仲間がいたのか!? アメイガス様もやられている。一旦退くぞ!」
俺は、自分の体がその場から離れる事に酷く危機感を覚える。
このままでは取り返しがつかない事になると思って追いかけようとした。
しかし、何とか立ち上がれたものの体がふら付いて思う様に動けない。
追いかけようと走ったところ、足がよろけて転んでしまう。
だが、俺の体は地面に叩きつけられたる事はなかった。
目の前に降りてきた何かによって受け止められたのだ。
「大丈夫かオリッシュ!? さあ、私と共に帰るのだ」
誰だ、この男!?
いや、見覚えがある。
確か、西軍の将軍シャーマナイト・ジュエルだ。
「な、何を!?」
俺は、目の前に現れた敵軍の将軍に抱きかかえられる。
そして次の瞬間、自分の体が奴と共に空高くに上がっていた。
「くッ! 何をす……る……。は、離せ……」
「落ち着けオリッシュ! この兄が来たからには、もう大丈夫だ!」
抵抗するにも、お互い空の上だ。
仮に奴から離れられたとしても、既に俺は落下死してしまう高さにまで上がっている。
このまま暴れるのは止めた方がいいな。
それに、突然高いところで上がったせいなのか急激に意識が遠のいていく。
このままではまずい事は分かっている。
しかし、抗う事はできなかった……。