風の魔法 その7
これから、どうしようか?
俺が、シャーマナイトの死を確認しようと思ったその時だった。
「お、驚いた。まさか、こんなに立派なウィンドカッターを出すなんて」
なんてこった。
シャーマナイトの奴、生きていやがる。
しかも、パッと見で無傷だから末恐ろしい。
流石は敵の師団長。
いや、これが魔法御三家の本来の実力と言うべきなのか?
そう考えると、同じ御三家であるハーモレイクを上手く殺せた事は幸運だった。
「お、お兄様! お怪我はありませんでしたか!?」
一応、心配する体を装ってシャーマナイトに対応する。
「この兄の事を心配してくれるのか? 嬉しいなあ」
「当然です! 至近距離であんな攻撃を受け止めるなんて」
「驚きはしたけど、あれくらいは当然できる」
シャーマナイトは余裕そうだ。
とりあえずは良かったが、こんな奴に敵として出会ったらと考えると恐怖でしかない。
無事に元の体に戻った後、どうやって倒せばいいんだか。
「しかし、本当に覚醒したんだな。並の魔法使いなら小さな風の刃を1つ出すだけでも相当苦労するらしいのに」
だろうな。
だが、俺は何の才能もない普通の人間の状態から、長年の修行で強力な魔法が使える術を体得した。
だから、例え才能ある貴族から見たら無能なこの体でも、俺なら強力な魔法が使えるわけだ。
ともかく、これでオリッシュが魔法を使える事をシャーマナイトに知らしめる事ができた。
しかも、あれだけ見事なものを出したのだ。
これなら戦場に残る事を認めされる事ができるかもしれない。
「それで、お兄様。私はここに残ってもよろしいでしょうか?」
「しかし、それとこれとは……」
この場に及んでごねるな!
「いいですか、お兄様? ハーモレイク旅団長は暗殺された今、この前線は戦力が足りない危険な状態です」
「そ、それはそうだが、向こうもアメイガス旅団長がやられている」
「でしたら尚の事、今がチャンスではありませんか。敵がやられている今こそ取り返さなければ」
「そのための戦力に、大事な妹であるオリッシュを投入しろだと!? ならん!」
こいつ、どんだけ妹が大切なんだよ……。
「戦争に出向くのは貴族の務めでは無いのですか?」
「そ、それは……」
「このまま戦場から逃げれば貴族の恥です」
「し、しかし……」
しかし、じゃねーよ!
「子供扱いしないでください!!」
俺はオリッシュの体で思わず力いっぱい叫んでしまった。
だが、こういう奴にはこれくらい強引に行かないと駄目だ。
そういや、こいつ……オリッシュは何歳なんだ?




