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風の魔法 その4

そうか、髪のセットか。

女はそういう面倒な事をしなければいけないのだったな。


「では、髪を結んでいきます」


メイドのレゾナは、オリッシュの長い髪を左右に分ける。

そして、それぞれを三つ編みで結び始めた。


成る程なあ。

こうやって結べば長い髪も少しはマシになるのか。

と言っても、どうしても邪魔になる事には変わりない。


他の女はどうやって髪が邪魔にならない様にしているのか?

そう思って、とりあえずメイドのレゾナの髪型を確認してみたが……。

邪魔にならないショートボブで全く参考にならないぞ。


「こんなに大変なら、私もレゾナみたいに短くしようかな?」

「いけません! こんなに素晴らしい長髪を切り落とすだなんてとんでもない」


確かに切り落とすのは勿体ないのだが……。

いや、やはり止めておこう。

無事元の体に戻れた時に髪が失われているのは可哀想だ。


「できました。いかがでしょうか?」


鏡で確認すると、見事な三つ編みの二つ結びに仕上がっている。

正直、これは真似できないなあ。

今後も髪型をセットするのにメイドの力が必要なのかと思うと気が重い。


「では、後は革のブーツを履いて、ツバ広の帽子をかぶって、シャーマナイト様に見てもらいましょう」


これでようやく敵将の魔法師団長シャーマナイトとの謁見か。

いや、会うのは敵としてでも、上司としてでもない。

この体の持ち主であるオリッシュの兄としてだ。


そして、今俺に差し迫った問題はこの戦場から離れなければいけない事。

妹を思う兄の行い、それが今の俺には効く。

馬鹿げた話ではあるが、何とかしなければいけない。


全ては元の体に戻るためだ。


「いつもながら、とってもお似合いです」

「そう……ありがとう」

「えっ!? ……いえ、これがメイドの務めですのでお気になさらず」


靴を履かせてもらい、帽子をかぶせてもらい、いよいよだ。

さあ、メイドのレゾナよ、俺をシャーマナイト……お兄様のところへと案内するのだ。


「あの、オリッシュ様?」

「!? ど、どうかしましたか?」


ど、どうした!?

何かしくじったか俺!?


「行かれないのですか? シャーマナイト様のお部屋に?」

「へ? レゾナが案内してくれるんじゃあ?」

「何を仰います!? メイドの私がオリッシュ様を連れて歩いては、皆への示しがつかないではないですか」


そうだった。

さっきから手取り足取りだったから、すっかり案内してもらえる気でいた。


さて、どうするか?

逆に案内するフリをしながら色々と回るつもりでいたが、この状況では許されそうにない。

そうだ、ここは一つ記憶喪失を言い訳に。


「あ、あの、レゾナ」

「何でしょうか?」

「実は、砦の中の記憶も無くて……」

「分かりました。進みながら、こっそりと道案内致します」


──できるメイドで助かった。


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